元中級幹部自衛官の私が、日本の「ウクライナ軍事支援」に断固反対する3つの理由 背後にちらつく“武器輸出解禁”という口実とは
対ロ、日本の損得と関係維持戦略

第1に、ウクライナは日本が前に出てまで関与する地域ではない、元3等海佐(中級幹部)の筆者(文谷数重、軍事ライター)は考える。
なによりも欧州の担当地域である。ウクライナは欧州に属している。それからすれば援助ほかで前に出るのも欧州である。
加えて、日本が
「深入りする理由」
もない。ウクライナとは武器弾薬を援助するほどまでに密接な関係にあるかは疑問である。はっきりいえば、そこまでの義理もないし利益もない。
安全保障環境の改善も理由にならない。
援助論者はロシアの脅威除去をも理由にしている。「仮想敵国であり弱体化を図るべき」「侵略戦争は成功しないとの教訓を与えるべき」との内容である。さらには
「今日のウクライナは明日の日本」
といった情緒にあふれた一文を添えることも多い。
ただ、日本からするとロシアはさほどの脅威でもない。
欧州では軍事大国だが東アジアでは凡庸である。極東ロシアの軍事力は中国、日本、韓国はおろか北朝鮮や台湾にも劣っている。冷戦後にはとるに足らぬ相手である。
日本に攻めこむ力はない。旧ソ連の時代からだが間宮海峡から東には大した軍事力は送り込めない。
逆に日本を恐れている。戦争となれば北方領土やサハリン防衛も難しい。
つまり、対ロシア軍備の観点からしても武器弾薬の援助は不要である。
むしろ日本はロシアとの関係も維持したい。天然ガスや漁業資源、木材資源の安定供給を確保したい立場にある。
損得づくからすれば、あまり邪険にしないほうがよいということである。実際のところ武器弾薬を援助をしてもロシアは対日禁輸はできない。天然資源は売り手よりも買い手のほうが強い。ただ、武器弾薬を援助してもウクライナから得られる現実的な利益はない。それなら武器弾薬を売らないことでロシアに恩を売ったほうがよい。そのような打算も成り立つのである。