本年度の運行は不可能か 東京BRTを包囲する「専用レーン有無」という現実的困難

キーワード :
, , , , ,
湾岸エリアと都心を結ぶバス高速輸送システム「東京BRT」の計画に遅れが生じている。プレ2次運行が未定のままで、2022年度中の本格運行も困難になりそうだ。

存在しない専用レーン

汐留バス停(画像:写真AC)
汐留バス停(画像:写真AC)

 現状、これらの運行開始は未定のままだ。とりわけ、動向を気にしているのが晴海フラッグの関係者である。

 マンションエリアの最寄り駅は都営大江戸線勝どき駅だが、徒歩で最短20分あまりと通勤・通学での利用は現実的ではない。最寄りまで到達する公共交通機関は晴海埠頭(ふとう)に発着する都営バスだが、現在もラッシュ時に混雑していることを考えると、大量に増発しなければ東京BRTの代替にはなれない。晴海フラッグには購入希望者が殺到しているが、ニュータウンとして発展するのか、もしくはゴーストタウンになるのかは東京BRTにかかっている。

 だが、たとえ運行を開始しても東京BRTが公共交通機関として有効かという根本的な点を疑問視する声も多い。なぜなら、東京BRTには根本的な点が欠けているからだ。

 明確な定義はないもののBRTは、専用の走行区間を確保し、速達性・定時性を持つバスとされている。よりわかりやすくするなら線路を敷いて電車を走らす代わりに、専用道路を用いてバスを走らせて定時性を確保した交通機関といえる。

 ところが東京BRTでは、基本の「き」である

・専用道路/専用レーン

が存在しないのである。

 従来の路線バスと異なり、東京BRTは「時間が読めること」を特徴と主張している。具体的には、本格運行時に導入予定の「公共交通優先システム(PTPS)」だ。同システムは交差点などで青信号の時間を調整し、BRT車両の通過を優先させることができる。これにより、時速11~15kmの一般バスより早い、時速20km以上で運行できるとしている。

 しかし道路が渋滞していれば、いくら青信号の時間が延長されたところでBRT車両も渋滞に巻き込まれて、定時運行は不可能になる。専用レーンが存在しない――この一点で東京BRTは成功が疑問視されているのである。

2031年までに40%以上も増える月島住民

2021年1月推計、中央区将来人口の見通しについて(画像:中央区)
2021年1月推計、中央区将来人口の見通しについて(画像:中央区)

 専用レーンが存在しないにもかかわらず、定時性は確保できるのだろうか。これは、東京都議会で議題となったことがある。東京都技監・佐藤伸朗氏は2019年6月の都議会で、

「本格運行では、全ての扉での乗りおりや、車内で現金を取り扱わない運賃収受方式により停車時間の短縮を図ることに加えまして、交差点でバスの通過を優先させる、いわゆる公共車両優先システムの導入などを図ってまいります。これらの取り組みにより、次世代型路面電車(LRT)や新交通システム並みの速度を目標とすることで、従来のバス交通にはない新たな輸送システムを実現してまいります」

としている。専用レーンの導入も検討課題とはなっているが、実現の見通しはない。

 湾岸エリアでは今後、さらなる人口増が見込まれている。中央区では2021年時点で17万583人の人口が、2031年には21万5201人(26%増)まで増加すると予想している。とりわけ湾岸エリアにあたる月島地区では、2021年1月時点で7万7933人の人口が2031年には11万503人(42%増)に増加するとしている。

 推計のように人口が増えのるか、また増えたときに公共交通機関のパンクを防げるかは東京BRT次第なのだ。

全てのコメントを見る