アニメが好きすぎて「聖地」に移住ブーム! でも、地方取材多い私がイマイチ賛成できないワケ
重要な移住の人生設計

何よりも冷静に考えなければならないのは、移住後の仕事である。
地方では大都市並みの賃金は期待できない。そのため、その土地で起業するか、移住前の仕事を継続するためにリモートワークで働くスキルも必要だ。作品の世界に触れる生活は、ファンにとっては理想的かもしれない。しかし、その夢を抱く前に、まず、移住後に
「どんな人生設計が描けるだろうか」
「その土地の特性に適応できるだろうか」
を自問してみるべきだろう。
筆者は地方取材で、聖地移住者に限らずさまざまな移住者を取材してきた。彼らの多くは、新しい土地で新しい生活を送ろうと奮闘している。その一例が、九州の田舎町で出会った関西からの移住青年だ。
大学卒業後、就職活動につまづき、数年間実家に引きこもった後、人生を変えるために地方移住を決意したという。現在の仕事について彼に尋ねると、こう返答された。
「今は働いていません。親から仕送りしてもらって、アパートでひとり暮らしをしています」
引きこもりから脱したい一心だったが、移住直後から状況が好転したようには見えなかった。その男が移住先で落ち着くことができたのかどうか、今でも気になっている。
また、移住者の経営する店でスピリチュアルめいた話に出会う機会も多い。初対面の移住者との話題が歴史に及ぶと、
「この町の○○神社がユダヤ教の神社であることはご存じでしょう」
と、あたかもそれが常識であるかのように話す人がいて、返答に窮したことがある。普段からこんなことをいっているようでは、地域住民と良好な関係を築けているとは思えない。
さらに最近では、移住者が何の知識もないまま独自の理論で農業を始め、周囲に迷惑をかけるという話もよく耳にする。先日も、害虫のジャンボタニシを除草に使うという奇妙な農法が話題になり、農林水産省が注意喚起を行ったことがインターネット上で話題になった。これほど極端ではないが、「自然農法」と称して除草をせず、かえって周囲の田畑に害虫を増やす迷惑な移住者の話は全国にある。
移住とは、誰も住んでいない土地を開拓することではない。「よそ者」として地域社会に溶け込み、徐々にその土地の風土になじんでいくものだ。
だからこそ、移住全般に関する問題について、時間をかけてじっくり考える必要がある。せっかく自分の住みたい場所を見つけたのだ。じっくりと、慌てずに、移住を成功させるための準備をしてほしい。