アニメが好きすぎて「聖地」に移住ブーム! でも、地方取材多い私がイマイチ賛成できないワケ
近年、自治体が「聖地移住」を推進する動きも出始めている。本当にうまく行くのか。
聖地移住の実態
しかし、安易な移住はお勧めできない。聖地移住ブームが始まる前から、筆者(昼間たかし、ルポライター)はそうした人たちに取材をしてきた。なかには「新しい故郷ができた」と定着した人もいるが、全員がそうなったわけではない。本稿では、計画通りに進まなかった人の事例について書く。トラブルを避けるため、作品名は伏せる。
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まずひとりめは、長野県の田舎町に引っ越してきた30代独身の男性ファンだ。「つまらない仕事をするなら、作品の舞台で楽しく暮らしたい」という気持ちで会社を辞め、移住した。
「まず、仕事を探すのに苦労しました。ハローワークにある求人は、非正規の工場勤務か介護の仕事しかありませんでした。それまで住んでいた関西の都市部と比べると、賃金はかなり安かったです。かといって、物価も家賃を除けば決して安くはありません」
そんな彼は今、都会にいた頃と同じように仕事に追われている。土日は休養と家事で、作品の舞台に足を運ぶ時間はほとんどない。地元の人々と交流する機会も少なく、
「以前と同じように孤独にアニメを見ている」
という。
ふたりめの広島県の地方都市に移住したファンは「聖地に住みたいという熱意だけの移住は避けたほうがいい」と話す。
「すべての住民が必ずしも作品に好意的なわけではありません。聖地巡礼の恩恵を受けているお店や企業もあれば、そうでないところもあります。ですから、作品が好きで移住したとはいいにくい雰囲気があります。それもあって、移住のきっかけとなった作品には少し飽きています」
いくら作品が好きでも、移住が成功するとは限らないのだ。