深夜の高速名物「0時待ちトラック」 私が“新深夜割引制度”の廃止を今すぐ求める4つの理由
求められる深夜割引制度の撤回

そもそも、運送会社が高速料金に対し、自腹を切らなければならないという状況がおかしいのだ。
「高速料金を負担してくれない荷主」
がいるから、運送会社は微々たる利益を必死に確保すべく、深夜割引にすがってしまうのである。
東京都トラック運送事業協同組合連合会が、2023年10月に発表した「第39回運賃動向に関するアンケート調査結果」によれば、高速料金については92.7%が
「原則として収受している」
「指定された場合のみ収受」
と答えており、同年5月に実施した調査より、「利用しても収受できない」という事業者は1ポイント減って4.9%になった。
しかし、この結果を喜んではならない。「指定された場合のみ収受」というのは、
「荷主の許可がないと高速道路を利用できない」
ということだ。実は「指定された場合のみ収受」の割合は、2022年3月以降、もっとも高い44.8%まで増加している(2022年3月の調査では、「指定された場合のみ収受」の割合は40.4%であり、1年半の間で4.4%も増加している)。現在でも高速料金は負担してくれるものの、「深夜割引を使え」と強制する荷主がいる。
断言するが、「0時待ち渋滞」を本気で解消したいのであれば、行うべきは深夜割引制度の改定ではない。「荷主が高速道路料金を負担してくれない」という諸悪の根源を絶つために、
・高速道路料金負担の義務化
・違反した場合の罰則制度
を法制化することだ。
「0時待ち渋滞」を本気で解消したいのであれば、むしろ深夜割引そのものを廃止する英断も必要だ。深夜割引のような時間帯割引がある限り、適用時間帯前に交通集中が発生することは避けられないからである。
岸田内閣は、2023年6月に発表した「物流革新に向けた政策パッケージ」において、「労働生産性向上に向けた利用しやすい高速道路料金の実現」を掲げている。そのとおりで、今求められるのは、物流の生産性向上や省力化・省人化のために最適な高速道路料金制度の見直しである。新たな割引制度によって、業界に混乱を引き起こすような、もっと言えば岸田内閣が推し進める「物流革新」政策の足を引っ張る制度改悪などもってのほかである。
ひとつだけ、NEXCO3社を擁護するとすれば、今回の新たな深夜割引制度は、2023年1月に発表された点である。「物流革新に向けた政策パッケージ」が発表されたのが同年6月だから、政策との整合性のなさには同情する。
今からでも、こんなばかげた深夜割引制度は撤回し、ぜひ
・トラック輸送ビジネスの生産性向上
・ドライバーの労働環境改善につながる制度のあり方
を再検討してほしい。ましてや、新たな深夜割引制度のために、巨額なインフラ投資が必要となるであろうETC無線通信専用アンテナの設置を行うなど“愚の骨頂”だ。
もう一度いう。新たな深夜割引制度を撤回し、NEXCO3社と政府は、どのような施策が物流の未来、ひいては日本の未来につながるのかを再考してほしい。