深夜の高速名物「0時待ちトラック」 私が“新深夜割引制度”の廃止を今すぐ求める4つの理由
「いっそ深夜割引制度なんてなくしてしまえ」 国土交通省と高速道路会社が発表した新たな深夜割引制度は、高速道路料金制度がトラック運送ビジネスにもたらした問題への本質的な考察を欠いている。
ドライバーと会社の切実事情

「社長に『絶対に深夜割引を取ってこい』っていわれるんですよ。もし、深夜割引が適用される前に高速を出てしまったら、割引相当額を給料から天引きされますから……」
さすがにここまでドライバーに負担とプレッシャーを掛ける運送会社は、今では少数派だと信じたい。
特に長距離輸送を担う運送会社にとって、「高速料金が30%も安くなる」深夜割引は魅力的だ。東京インターチェンジ(IC)から茨木IC(大阪府)までの大型トラックにおける通常のETC料金は、1万7720円。しかし深夜割引が適用されれば、1万2400円。その差額は
「5320円」
にもなる。
ドライバーに「深夜割引を取ってこい」と命じる経営者の事情も厳しい。全日本トラック協会が会員企業の経営状況をまとめた「経営分析報告書 令和3年度決算版」によれば、貨物運送事業における平均営業損益はマイナス223万1000円であり赤字である。
同報告書によれば、2009(平成21)年以降、会員企業の平均営業損益がプラスに転じたのはわずか1回、2016年だけである。赤字幅に違いはあれど、ずっと赤字が続いているのだ。つまり、運送会社の多くは、本業である貨物運送事業で赤字を出し、それ以外の事業で本業の赤字を補填しつつ、経営を行っていることになる。
「深夜割引を取ってこい」と命じる運送会社経営者であっても、実は心のなかでドライバーにわびている人も少ないはずだ。経営のために1円でもコストカットをしなければならない運送会社の懐事情が、「0時待ち渋滞」を生み出す原因のひとつとなっている。