羽田衝突事故、ミス想定の多重対策で「ヒューマンエラー」は防げないのか?

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多くの人命を預かる複雑なシステムに人間の判断や操作が組み込まれる場合、人的要因は安全性を確保する上で極めて重要な問題となる。

人間信頼性工学への転換

羽田空港の管制塔(画像:写真AC)
羽田空港の管制塔(画像:写真AC)

 羽田空港では、事故を招いた一因とされる「Number 1」など、出発順を示す管制用語を当面使用禁止にするなど、差し当たっての緊急対策を実施している。また、国土交通省が今回の事故を受けた事故対策検討委員会を立ち上げ、1月19日には初回の会議も開催された。

 しかし、航空管制のシステムや規則は基本的には国際ルールにのっとっており、抜本的な変更が行われるわけではない。検討委員会の取り上げる課題も、パイロットと管制官への注意喚起システムや交信要領の見直しに関するものとされており、問題の根本に踏み込んだとまではいえない内容だ。

 そもそも、羽田空港の運用に関しては、その

「過密なスケジュール」

が以前から問題とされてきた。今回の事故も、到着機の合間を縫って出発しようとした海保機に、着陸許可を得ていた日航機が衝突したものである。また、こういった過密スケジュールのなかで、管制官は高いワークロード(作業負荷)にさらされており、十分な監視が行き届きにくい状況にあった。

 人間信頼性の観点で考えれば、もはや

・教育訓練の強化
・単純な増員

だけでは、羽田空港のように過酷な条件下のリスクを大きく引き下げるのは難しいだろう。検討委員会の提言を取り入れるだけではなく、羽田空港の置かれている状況そのものの見直しも、事故防止の観点からは重要である。

 羽田空港は日本で唯一4本の滑走路を持っているが、発着数は1日約1300回、ピーク時は1時間に最大90回(1分あたり1.5機)が発着するという。その過密度は世界3位に数えられ、事故当時はまさにピークの状態にあった。

 世界屈指の過密な空港には、世界最先端の安全対策が求められることは当然だ。これを機会に産官学が手を携え、航空管制の世界にとどまることなく、人間信頼性工学の普及と充実を図るべきであろう。

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