羽田衝突事故、ミス想定の多重対策で「ヒューマンエラー」は防げないのか?
多くの人命を預かる複雑なシステムに人間の判断や操作が組み込まれる場合、人的要因は安全性を確保する上で極めて重要な問題となる。
信頼性設計の限界

航空の分野では、歴史的な知見の積み重ねで機体システムの機械的信頼性や安全性が向上してきた反面、パイロットや整備士のミスなど人的要因による事故の割合が高くなっている。そのため、自動運転タクシーのように、航空機も完全無人化システムにすべきだと極論する学者もいるほどだ。
しかし、想定外の事態に対応できる人間の能力は、自動化された機械にはまねができないし、小型機などを含めて全ての航空機を無人化することも非現実的だ。自動化に頼るだけではなく、人間信頼性を向上させる努力を続けるしかない。
機械や電子システムの信頼性・安全性については、統計的に求められた部品やデバイスの故障確率を考慮した設計を行い、システム全体の故障を防ぐ手法が用いられる。飛行の安全に重要な操縦系統などでは、同じ機能を持つコンピューターやセンサーを複数台搭載し、単一の故障で機能を失わないようにする冗長化など、確率論的にリスクを低減するのが普通である。
ところが人的要因に関しては、冗長化の効果も限定的である。多重化したことで
「他の人がやっているから」
という意識が働き、逆にエラーの発生頻度が上がってしまうというデータがあるほどだ。過去に起きた事故やインシデントでも、副操縦士が
「おかしいと思ったが、機長が判断したのだから」
というような理由で、間違いを正せなかった事例が多く見られる。そのほか、人的要因によるエラーのリスクは疲労や焦りによっても大きく増加し、複数の条件が複合的に作用する。このような特性を持った人間信頼性の問題に関しては、古典的な機械信頼性とはまったく異なり、
・認知心理学
・生理学
などの知見も取り入れたアプローチが必要である。