カワサキが今月「水素バイク」を発表した深い理由 なぜこのタイミングだったのか?
カワサキは先日、水素燃料モーターサイクルを発表した。なぜこのタイミングだったのか。その答えは、今後のモーターサイクル市場の動向を見据えた長期的な戦略にある。
モーターサイクルの未来図
このような基本的な問題を考えると、スポーツモーターサイクルでは、既存の内燃機関メカニズムをそのまま使える水素燃焼エンジンが有利かもしれない。
実際の操作感や操縦感は、内燃機関モデルと大差ないレベルにチューニングすることは、おそらく難しくないだろう。つまり、スポーツモーターサイクルとしての将来性はこちらの方が期待できるということだ。
ちなみに、こうした既存技術と脱炭素技術の両立は、他の国産モーターサイクルメーカーにとっても以前から重要課題として認識されていた。その結果、2023年6月、カワサキ、ホンダ、スズキ、ヤマハの国内メーカー4社によって、水素小型モビリティエンジン技術研究組合(HySE)が設立された。小型モビリティ用水素エンジンの実用化に向けた共同基礎研究を行うのが目的だ。
前述したように、水素燃焼エンジンの分野をリードするトヨタと、水素の運搬など取り扱いのノウハウが豊富な川崎重工業が特別組合員として参加し、研究をバックアップする。
これまでの経緯を見ると、カワサキが発表した水素燃料モーターサイクルは、突発的に開発されたものではなく、数年にわたる地道な研究と内燃機関の将来像を見据えた結果であることがわかる。
HySEが構想する水素燃焼内燃機関は、モーターサイクルだけを対象としているわけではない。小型の建設機械や農業機械、エンジン駆動の発電機やポンプなど、産業機械全般にも応用できる。これらの分野で使用される燃料を、ガソリンや軽油から水素に切り替えることが可能になれば、技術の将来性はさらに広がるだろう。