カワサキが今月「水素バイク」を発表した深い理由 なぜこのタイミングだったのか?

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カワサキは先日、水素燃料モーターサイクルを発表した。なぜこのタイミングだったのか。その答えは、今後のモーターサイクル市場の動向を見据えた長期的な戦略にある。

航空機エンジン分野への参入

カワサキモータースのウェブサイト(画像:カワサキモータース)
カワサキモータースのウェブサイト(画像:カワサキモータース)

 さて、ここでHySEを離れて、カワサキ単体の水素ビジネスについて少し触れたい。

 実は、冒頭で触れた「グループビジョン2030進捗報告会」のテーマは、水素燃焼モーターサイクルだけではなかった。最大の焦点は

「航空機エンジン分野への参入」

だった。

 ここでは、H2SX用エンジンをベースにしたハイブリッド用パワーユニットを、フランスの航空機ベンチャーであるボルトエアロに供給することが決定された。今後の計画としては、まず第1段階として、2030年までに直列6気筒ターボのガソリンエンジンモデルの型式承認を、2035年までに同形式で水素燃料モデルの型式承認を取得する予定である。いうまでもなく、水素燃料機関が本命である。

 航空ビジネス部門における脱炭素化計画には現在、持続可能な航空燃料(SAF)の推進が含まれている。しかし、肝心の動力源をガスタービン/ターボシャフトから移行するのは、少なくとも航空輸送ビジネスに使用される機体では容易ではない。

 こうした状況において、商用・自家用小型機のガソリン内燃機関を水素燃焼内燃機関に転換することは、これらのエンジンを使用するハイブリッド機の普及とともに、無理のない脱炭素戦略への第1歩として有望である。

 カワサキが将来的にビジネスとして広く展開することを目指す水素燃焼内燃機関は、モーターサイクルだけに適用されるものではない。航空機分野だけでなく、これまで産業界で大きな役割を果たしてきた小排気量内燃機関全体にも適用できる。

 日本の基幹産業全体の将来にとって、重要かつ意義深い内容である。

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