京都市の止まらぬ「観光公害」 財源なければ「寺社税」復活しかないのか? 地元紙も報道の辛らつ現実とは

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京都市は「観光公害」によって深刻な交通渋滞に見舞われている。さて、抜本的な対策として、観光客への課税を財源に公共交通を改善することはできないだろうか。

AI予測で効率的なバス運行

京都市(画像:写真AC)
京都市(画像:写真AC)

 では、仮に京都市が拝観料への課税と宿泊税の2本立てを実施し、年間約50億円の税収を得た場合、どのような公共交通関連事業が可能になるのだろうか。

 京都市は観光客の利便性を高めるために独自の取り組みを展開している。特に注目したいのは、スマートフォンの位置情報や気象データ、時間帯などのビッグデータをもとに、AIが最大2か月先まで5段階でエリアごとの混雑状況を予測する「観光快適度予測」システムだ。

 2023年度には、ライブカメラの映像解析を取り入れることで、予測の精度をさらに高めた。こうした高度なデータ分析を活用することで、市バスの効率的な運行が可能になる。例えば、AIを活用した混雑予測データは、需要の多い地域や時間帯に応じてバスサービスを調整するのに利用できる。

 LRTの新設には年間約50億円の税収ではまったく足りないが、こうしたバスの効率的な運行やサービス向上に必要な投資額を増やすには十分だろう。さらに、運転手の待遇改善を通じて人材不足に対処する努力もできるだろう。バス運転手の労働環境を改善し、より多くの人材を確保することもできるだろう。

 その上、観光客にとってのメリットも大きい。税収の増加を通じて、公共交通システムの質が向上すれば、観光客はよりスムーズに移動できるようになる。目に見える改善によって、観光客の課税に対する“拒否感”も緩和されるだろうし、多少の追加課税を喜んで受け入れるだろう。

 現在、観光客は公共サービスにただ乗りしているようなものである。魅力的で、スムーズに移動できる観光都市を維持するためなら、より多くの負担を求めることはあってもよいだろう。

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