京都市の止まらぬ「観光公害」 財源なければ「寺社税」復活しかないのか? 地元紙も報道の辛らつ現実とは
再燃する議論

これ以降、言及されることのなかった寺社への課税が再び議論の的になったのは2022年のことだ。地元紙『京都新聞』が3月7日付夕刊で「寺社に課税を市民の声 “観光収入あるのに”“不平等”」として報じたことがきっかけだ。
「「観光客からもうけている寺社から税収を得られないか」「寺社の税免除はあまりに不平等」―。そんな意見が、昨年夏におこなわれた京都市の行財政改革(行革)案への意見募集で相次いだ。財政危機からの脱却を目指す行革案に対し、寄せられた意見は約9000件。うち約240件が寺社に負担を求める意見だった」
そして、記事では「中には古都税の復活を求める声も41件あった」としている。
関係者の間でこの記事の反響は大きく、専門誌『月刊住職』『宗教問題』では相次いで古都税復活のトピックを扱う記事を掲載している。
とりわけ『宗教問題』35号(2021年夏季号)に掲載された元京都市会議員・村山祥栄氏の寄稿では寺社関係者のなかにも拝観料の一部を市に納めることに前向きな関係者の声も紹介し、
「近い将来に何らかの動きが出てくる可能性は高いのではないだろうか」
と結んでいる。
では、実際の拝観料に課税した場合、どれだけの税収が見込めるのだろうか。
古都税が導入された当時、京都市は年間約10億円の税収が見込めると試算していた。前述したように、古都税の税額は大人ひとりあたり50円に設定されていた。現在の物価上昇を考慮し、税額を2倍にした場合、税収は約20億円になると試算されている。
これは確かに魅力的な税収源である。しかし、大規模な公共事業、例えばLRTや交通システムなどの新しい公共交通機関の導入のための財源としては十分な規模ではない。
さらに、高額な課税を導入する際には、観光客が減少するリスクを考慮しなければならない。観光地としての京都は、その魅力から多くの観光客を引きつけている。ただ、いくら魅力的であっても、過度な課税は観光客を遠ざけてしまう可能性がある。したがって、税収を増やすための課税戦略は慎重に検討する必要がある。