EV製造に欠かせない「黒鉛」 自動車メーカーが調達難におびえる中国支配の現実、“脱中国”はまだ先の夢か
中国政府は10月20日、EV用のリチウムイオン電池の材料である黒鉛(グラファイト)について、12月1日から輸出規制を強化すると発表した。今後どうなるのか。
黒鉛不足の深刻化

このように、黒鉛の調達先多角化の動きは活発になってきたが、短期的には調達難に陥る可能性もある。黒鉛はこれまで
「鉄鋼用」
が主用途だったが、車両用需要が急速に拡大しているからだ。
コンサルティング会社のプロジェクト・ブルーは、今後数年間で黒鉛不足が深刻化し、2030年までに世界で
「77万7000トン不足する」
と予想している。
天然黒鉛では中国に太刀打ちできない西側諸国は、人工的に生成する人造黒鉛に活路を見出そうとしている。人造黒鉛市場について、調査会社のモードー・インテリジェンスは、今後5年間で40%余り拡大し、2028年には
「42億ドル」
に達すると予想している。しかし、人造黒鉛でも、貝特瑞新材料集団(BTR)や寧波杉杉股分など中国の電池材料大手が先行している。
こうしたなかで、黒鉛に代わる負極材としてシリコン材への期待が高まっている。しかし、シリコン材には充電時に膨張しやすいという特性があり、電池を劣化させてしまうという課題を抱えていた。
ただ、この課題は克服されつつある。2023年5月には蓄電池大手のGSユアサ(京都市)が、シリコン系負極電池の高エネルギー密度化と長寿命化を両立する技術を開発したと発表している。
一方、英国のネクシオンも、より高容量かつ充電時の膨張を抑制することが可能なシリコン材の開発に成功した。これを受け、パナソニックエナジーは7月、ネクシオンとシリコン材を調達するための売買契約を締結したと発表している。
長期的には、黒鉛調達の脱中国や、黒鉛に代わる負極材の開発が進むと見られるが、当面は自動車メーカーが窮地に陥る局面も出てくるだろう。