EV製造に欠かせない「黒鉛」 自動車メーカーが調達難におびえる中国支配の現実、“脱中国”はまだ先の夢か

キーワード :
, ,
中国政府は10月20日、EV用のリチウムイオン電池の材料である黒鉛(グラファイト)について、12月1日から輸出規制を強化すると発表した。今後どうなるのか。

パナソニックエナジーとNMGの提携

シラー・リソーシズのウェブサイト(画像:シラー・リソーシズ)
シラー・リソーシズのウェブサイト(画像:シラー・リソーシズ)

 中国に代わる黒鉛調達先の確保が急務となるなかで、いま期待を集めているのが豪州資源企業だ。豪資源企業シラー・リソーシズは2020年7月に、米ルイジアナ州で同社初となる黒鉛精製工場を稼働させた。

 同工場は2040年までにEV230万台を製造できるだけの負極生産体制を確立する計画だという。ルイジアナ工場に供給される黒鉛は、シラーがモザンビークで採掘したものだ。

 EVメーカーのテスラは、2021年にシラーがルイジアナ工場で精製する車載電池用黒鉛の大半を調達することで合意している。テスラはまた、豪マグニス・エナジー・テクノロジーズとも黒鉛調達で契約を結んでいる。

 一方、豪資源企業のエコグラフは、タンザニアの鉱山から採掘した黒鉛を精製する工場を2022年に豪州西部で稼働させ、独鉄鋼・機械大手のティッセン・クルップ系企業に供給する契約を結んだ。

 エコグラフは、10月9日にはベトナムの複合企業ベトナム投資グループ(ビングループ)傘下でEV用バッテリーを製造するビンESエネルギーソリューション(ビンES)と提携したと発表している。エコグラフはベトナムでの負極板の材料製造も視野に入れている。

 豪政府は、黒鉛採掘に取り組む資源企業を支援してきた。2021年には重要鉱物事業への融資制度を設け、2022年2月にエコグラフへの融資を決めている。米国政府も豪資源企業を後押ししてきた。2022年4月には、米エネルギー省が、ルイジアナ州の工場拡張のための資金1億万ドル以上をシラーに融資することを決定している。

 さらに、パナソニックホールディングスの電池事業会社パナソニックエナジーは北米での車載電池の生産を拡大してきた。2022年10月には、カナダの負極材メーカー・ヌーボー・モンド・グラファイト(NMG)と提携し、材料調達で協力する体制を整えた。

 パナソニックエナジーは、NMGが保有するケベック州のマタウィニー鉱山で採掘された黒鉛を、同州ベカンクールにある電池材料工場で負極材に加工することを目指している。これが実現すれば、カナダ産黒鉛をEV用電池向けの負極材料に加工する初めての事例となる。

全てのコメントを見る