広告費をかけないテスラが、あえて「羽田空港」に動画広告を出した理由
X動画、世界中で反響
X(旧ツイッター)のユーザーが、羽田空港で撮影したテスラの19秒間の広告動画を投稿し、世界中で波紋を呼んだ。
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広告の内容は、空港の通路に並ぶ巨大スクリーンにモデルY、オートパイロット・システム、スーパーチャージャーを紹介し、テスラのウェブサイトにつながるQRコードを表示するというものだった。
テスラは広告宣伝費をかけないことで有名だが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2023年5月の年次株主総会で
「今後は広告を試してみる」
と示唆していただけに、テスラとしては異例の出稿となった。
なぜテスラが日本での広告出稿に踏み切ったのか、本稿ではその背景を探る。
出稿を始めた理由
テスラは2023年5月、Xのアジア向け公式アカウントにおいて、シンガポールで撮影した広告動画の配信を開始し、6月には米国と英国でグーグル検索の上位に表示される有料広告(リスティング広告)も開始した。
Xにアップロードされた広告動画は約2分で、シンガポール在住で金融会社に勤める女性がモデル3の機能や利便性を紹介する内容となっている。テスラがこれらの広告を始めた狙いは、次のとおりである、
・テスラブランドの認知度を高める
・テスラの各モデルが提供する利便性を訴求する
・電気自動車(EV)自体の認知度を高める(正しい理解の促進)
投資に見合うリターンがあるという判断に至ったようだが、さらにふたつの理由が考えられる。
ひとつ目は、競合他社が広告露出を増やすなか、テスラも黙っていられなくなったということだ。各社は新型モデル、特にEVの広告を増やす傾向にあり、熾烈(しれつ)な販売競争のなかでは、テスラといえどもブランド認知度を高めるために広告を出す必要があった。
また、マスク氏によるツイッター買収が関係している可能性もある。ツイッターは広告収入を基盤としているが、マスク氏の買収や従業員に対する度重なる強圧的な発言により、広告主は次第に距離を置くようになった。そのため、Xの広告収入に少しでも貢献しようと、テスラが広告を増やしたのではないかという臆測もある。
いずれにせよ、長年にわたって広告宣伝は不要との見解を示し、研究開発への投資を優先してきたマスク氏が、激しい競争に直面して方針を転換したことは間違いなさそうだ。