今も残る欧州「吊り掛け駆動」 鉄道の近代化で、現役車両を見られるチャンスは最後かもしれない
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欧州では、新造車両で吊り掛け駆動方式を採用するのは機関車くらいに限られているが、現役で残る吊り掛け駆動の車両は、今もまだ比較的多い。
「吊り掛け駆動」とは何か

電車や電気機関車といった電気車両で、モーターからの動力を伝達する方式に「吊り掛け(釣り掛け)駆動」というものがある。モーターが台車枠と車軸に橋渡しされるような形で載せられるという構造、すなわち吊り掛けられている状態であることから、この名前が付けられている。
吊り掛け駆動方式は構造が簡単であるため、分解も組み立てもしやすく、製造コストが安いといった利点がある。また、特に大出力を必要とする機関車においては、モーター自体が大きくなるため、構造が簡単な吊り掛け駆動の方が耐久性の面で有利とされている。
半面、モーターが直接車軸に載せられるという構造から、モーター重量の半分ほどが車軸に載ることになり、ばね下重量が重くなるという欠点がある。ばね下重量の増加は、線路のみならず車体そのものにも大きな衝撃を与えることになり、騒音も大きく、乗り心地も決して良くない。もちろん、高速走行には不向きである。
高速で走る電車が主流となった現代の日本においては、カルダン駆動が主流となっていて、吊り掛け駆動方式はすでに旧来の技術となっている。この駆動方式を現在も採用するのは、騒音や振動などなどによる影響を受けにくい路面電車のような低速の車両や、前述の通り大型・高出力の電動機を搭載する電気機関車・電気式ディーゼル機関車などに限られている。
もっとも、路面電車も新型車は低床車両が主流となってきており、今後は機器を流用した車体更新車以外で製造されることはほぼないだろう。