今も残る欧州「吊り掛け駆動」 鉄道の近代化で、現役車両を見られるチャンスは最後かもしれない
- キーワード :
- 鉄道
欧州では、新造車両で吊り掛け駆動方式を採用するのは機関車くらいに限られているが、現役で残る吊り掛け駆動の車両は、今もまだ比較的多い。
欧州で残る吊り掛け駆動

欧州でも、新造車両で吊り掛け駆動方式を採用するのは機関車くらいに限られているが、現役で残る吊り掛け駆動の車両は、今もまだ比較的多い。これらの多くは、すでに30~40年以上使われ続けた古豪で、更新されながら大事に使われてきた車両たちであるが、さすがにどの車両も古くなってきており、いずれは新型車への置き換えが行われることになるだろう。
つい最近まで、多くの吊り掛け駆動車両が残っていた英国は、近年になって新型車両を大量に導入して近代化を進め、特にコロナ禍以降はかなりの数の車両が姿を消した。
ロンドン都市圏では、ロンドン地下鉄ベーカールー線の1972型とピカデリー線の1973型がまだ現役だが、1973型は間もなく登場する新型車両によって順次置き換えられる予定となっている。
興味深い車両としては、サウスウエスタン鉄道の455系で、制御機器をフォスロー・キーペVossloh KiepeによってIGBTインバーターと交流モーターへ換装したが、台車を含めた駆動装置をそのまま流用したことで、世にも奇妙な「インバーター制御 + 吊り掛け駆動」という車両が誕生した。吊り掛け駆動方式特有のうなり音と交流モーターという組み合わせは、かなり珍しいといえるだろう。
ドイツのミュンヘンで最後の活躍をする420型電車もまた、吊り掛け駆動を採用している。3両編成480本が製造され、ドイツの主要都市で通勤用として使用された同車は、空港と都心部を結ぶ路線にも使用されていたため、日本人旅行者やビジネスマンにもなじみの車両といえるが、すでにミュンヘンに残るわずかな編成のみとなっており、近い将来には姿を消すことになるだろう。