EV大量廃棄 中国の都市部で「EV墓場」が増え続ける根本理由
中国では2019年以降、大量のEVが廃棄される「墓場」が存在することがたびたび報じられており、ユーチューバーによるドローン空撮映像も流出している。「墓場」が生まれた背景を追う。
2019年に起きた転機
では、なぜカーシェアリング・サービス会社が相次いで倒産に追い込まれたのだろうか。
中国政府は2000年代後半からEV1台あたり最大6万元の購入補助金を支給しており、一部の大都市ではガソリン車の保有制限も始めていた。EVカーシェアリングサービスの優遇措置が始まった2015年以降、中国の地場自動車メーカーはカーシェアリングサービスに自社のEVを提供する会社を設立していた。そして2019年に転機が訪れた。
中国政府がEV購入補助金の減額に踏み切り、多くのカーシェアリングサービス会社が政策変更に対応できず、資金繰りに大きなダメージを受けた。
現在の中国市場におけるEVブームは、ある意味、こうした政策によって人々がEVを正しく認識できるようになったことに起因するといえるが、役目を終えた大量のEVが廃棄され、「墓場」と化している現実は受け入れがたい。
2019年12月、中華人民共和国工業情報化部などが起草した「新エネルギー車産業発展計画(2021~2025年)」が発表され、2025年までに新エネルギー車(NEV)比率を25%に引き上げる目標が掲げられた。
これにより、EVの主戦場はカーシェアリングサービスから個人消費へと大きくシフトし、購入補助金などの政策によりEV市場は予想をはるかに上回る規模で拡大した。
2020年以降はコロナ禍による都市封鎖があったものの、2022年のNEV販売台数は689万台、シェアは25%を超えるまでに成長し、結果的に先の計画は達成されたことになる。