MRJの失敗は必然だった? 元航空機エンジニアの私が感じた「うぬぼれ技術者」発言への違和感、部下への責任転嫁に民間産業の未来なし
三菱航空機の社長として一時期のMSJ開発を率いた川井昭陽(てるあき)氏が、テレビ愛知のインタビューに対し、日本人技術者の「うぬぼれ」が失敗の理由だと発言し、一部のひんしゅくを買っている。いったいなぜか。
異常な審査体制

JCAB航空機技術審査センターの清水哲所長によると、三菱航空機は日米両国で並行して審査を受け、設計を進める考えだったという。
しかし先にも書いたとおり、日本も米国も互いに主権を持つ独立国家である。日米両国による並行審査を構想するなら、両政府がしかるべき取り決めを交わし、設計段階から共同の審査機関を設けるような体制が必要だ。
しかし、そんな虫の良い話を米国政府が受け入れる理由はない。MSJの開発は非現実的な構想を前提に始められ、FAAの承認が得られるかどうかわからない設計に基づいて、試作や飛行試験の段階に進んでいったのである。
川井氏らは、外国人技術者ならFAAの審査に耐える設計ができると思ったのかもしれないが、それは見当違いの思い込みだ。設計は技術者が審査当局と調整しながら進めるものであり、最初からFAAが納得する設計案だけを用意することなど、いくら経験が豊富な設計者でも不可能だ。航空機の開発は設計者だけが行うのではなく、審査に当たる政府当局との共同作業なのである。
したがって、いくらボーイングのOBであっても、設計作業の能力そのものは日本人と違いはなく、日本人技術者が彼らのいいなりにならなかったのも無理はない。そもそも三菱の設計者はボーイング777や787の共同開発設計にも参加しており、設計能力がボーイングの技術者に劣っているわけではない。
強いていえば、米国人技術者はFAAへの提出資料などについて日本人より詳しいだろうから、彼らのおかげで審査を受ける準備がはかどったというのは本当だろう。