新興EVビンファストが米国上場 初値上昇で期待高まるも、冷静に考えたら「前途多難」すぎるワケ
米国での販売不振

2023年3月にベトナムからの輸入販売を開始したが、7月までの累計販売台数は1230台と振るわず、5月にはソフトウエアの不具合によるディスプレー不良でVF8の999台のリコールも発生した。
米国の販売網は、サンフランシスコとロサンゼルスを中心としたカリフォルニア州の13店舗。オンライン販売もあるが、新興メーカーとしてはまだブランド力が弱く、試乗が購入の決め手となるため、全国規模のショールームによる販売網の拡大が課題だ。
現在のラインアップは、VF8とVF9の2種類の中型・大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)で、価格帯は4万6000~8万3000ドル。年内には小型SUVのVF6が発売され、ノースカロライナ工場で生産されるVF7と合わせて4車種になる見込みだ。当面はカリフォルニア州など米国西部のアジア系移民が主な購買層となりそうだ。
一方、欧州市場ではドイツ、フランス、オランダで50店舗の出店を計画しているが、安全基準を満たさないなどの理由で販売開始が遅れており、9月に開催されるミュンヘンモーターショー(旧フランクフルトモーターショー)への出展も見送った。このことからも、同社が北米市場をメインマーケットに据えていることは明らかで、米国販売網の整備が急務となっている。
アフターサービスなどで差異化

テスラの相次ぐ値下げで米国のEV市場が価格競争に陥るなか、ビンファストは2023年6月、他のEVメーカーとの差別化を図るため、独自のアフターサービス基準を発表した。
自社の過失による故障やシステムエラーが発生した場合、修理費用の全額補償に加え、最低100万ドン(約6000円)の現金またはクーポン券を全世界の購入者に提供するというものだ。
また、ベトナム市場限定ではあるが、2022~2024年に購入したEVについては、1年後の残価率(買い取り価格。単位%)を85~90%、5年後の残価率を53~66%に設定している。
・走行距離が3万5000km以下である
・タクシーとして使用していない
ことなど、一定の条件を満たす必要があるが、事前に残価率を公表することで、ブランド価値と品質を維持する姿勢を打ち出している。今後、同様の制度が世界的に導入される可能性もある。
このようなほかにはない顧客サービスを次々と打ち出すことで、新興メーカーの技術水準に対する不安を拭い去り、販売台数の減少に歯止めをかけようとしている。