ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?
日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。
日本に適用可能か

シュタットベルケ・モデルの日本への適用は可能だ。
ただし上述のように、日本の地方公営企業はエネルギー事業を欠いているので、「日本版シュタットベルケ」たりえない。むしろ、東日本大震災後の電気事業法改正により可能となった
「地域新電力」
に可能性がある。これは、再エネを中心に、地元で生産された電力を地元企業・住民に供給するビジネスを展開する企業で、日本では現在、全国で約80の設立事例がある。
もっとも分かりやすいのは、宇都宮市の事例である。市が過半出資する「宇都宮ライトパワー」が市内で生産された再エネ電力を、宇都宮芳賀ライトレール線に供給する。2030年までには市内路線バスも電動車化し、そこで用いられる電力も宇都宮ライトパワーの再エネで賄う計画だ。
もっとも現時点では、宇都宮市をはじめ、日本の地域新電力は交通事業を全面的に支えることができるほど高い収益力を誇るわけではない。にもかかわらず、地域で交通とエネルギーという二大インフラ企業が連携し、まちづくりに寄与することの意義は大きい。
交通とエネルギーはまさに、地域にとって
「背骨」
を形成するからだ。
将来的には、交通とエネルギーを軸とした、まちづくり会社の創設も検討されてよい。そのためのプラットホームを、地域新電力と交通事業会社が協力して創設するイメージだ。これは、報告書の名称に入っている「総合都市経営」への道でもある。