ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?

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日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。

「シュタットベルケ」とは何か

日本の地方都市のイメージ(画像:写真AC)
日本の地方都市のイメージ(画像:写真AC)

 第2は、ドイツのようにシュタットベルケ(Stadtwerke:都市公社)の仕組みを用いて、内部補助により公共交通を支える方法である(同上第1章、および第3章)。これは、ドイツで上下水道、公共交通、エネルギーなどあらゆるインフラを手掛ける自治体100%出資の公益事業体を指している。

 日本では地方公営企業に相当するが、違いもある。ドイツでは電力、ガス、熱の供給などエネルギー事業が中核的な役割を果たしているのに対し、日本の地方公営企業は、エネルギー事業をほとんど手掛けていないのだ。

 エネルギー事業は一般に収益力が高く、黒字を計上している。これに対して、同じシュタットベルケ傘下の公共交通会社は赤字経営を計上するのが常である。そこでシュタットベルケでは前者の黒字で後者の赤字を賄い、なおシュタットベルケ全体としては黒字経営を維持する構造となっている。

 もちろん、黒字企業が赤字企業を支える財源調達方式には批判もある。エネルギー企業が黒字なら、民営化すべきだという意見も強く、実際そうした自治体もある。だが、市民の支払ったエネルギー代金の一部は、ベルリンやストックホルム、果てはロンドンに住む株主に配当として流出し、地域には残らない。民営化された企業の本社は地元にないため、サービスも低下した。

 シュタットベルケ方式ならば、市民の支払ったエネルギー代金が、地域交通という形で市民還元され、地域の実質所得も上昇する。つまり、シュタットベルケは

「地域経済循環」

を促すのだ。地域密着型なら、サービスも向上する。こうして、かつて民営化されたエネルギー企業の多くは、2010年代に「再公有化」された。

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