ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?
日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。
採算性は? 財源はどうするのか?
仮に以上の欧州の取り組みが望ましく、かつ成果を上げているとしても、
「事業として採算は取れているのか」
「もし取れていないなら、それを支える財源はどこから来るのか」
と読者は疑問に感じるに違いない。
この問いに対しては、
「採算は取れていない」
という回答になる。それどころか欧州では、「公共交通では独立採算制は成立しない」ことを前提に運営がなされ、制度・政策が組み立てられていることを強調しておきたい。
これは、独立採算制が当たり前の日本では、驚きをもって受け止められるかもしれない。日本ならば、
「そのような赤字路線は廃止すべき」
という意見が出てきそうである。ではなぜ欧州の都市は、赤字でも公共交通を維持・拡張しようとするのか。
それは、公共交通が上述のように、21世紀の都市発展にとって不可欠なインフラと認識されているからだ。これを経済学的に表現すれば、
「公共交通は外部経済をもたらす」
ということになる。この場合、公的支援は正当化される。
では具体的に、財源はどのように調達されているのか。第1の方法は、交通目的の課税を導入することである。上記報告書では、フランスの「モビリティ負担金」(第7章)とニューヨーク市の「交通目的税(専用税)」(第8章)が紹介されている。
日本でも、滋賀県の税制審議会で「交通税」の導入の検討が進んでいるところである。もし実現すれば、日本で初めての交通目的の地方課税となる。