ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?

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日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。

中心市街地と公共交通への投資

ドイツのLRT(画像:写真AC)
ドイツのLRT(画像:写真AC)

 ドイツ都市の中心市街地が魅力を保つ鍵は、

・中心市街地に投資してその魅力を引き上げたこと
・都市のスプロール化を防ぐ都市計画とセットで公共交通に投資を行ったこと

これら2点に求められる。

 1点目だが、ドイツは1980年代から中心市街地を、市民が集まる魅力的な街区に変貌させた。その際、中世以来の歴史的街並みの残る中心街区を再整備し、アスファルトを剥がして石畳を敷きなおした。その上で自動車を進入禁止とし、子連れの家族や高齢者が安心して歩ける歩行者専用エリアとした。

 マルクト(Markt:市場)と呼ばれる市民広場には、ショッピングセンターに加えて個性的で魅力的な個人店舗/カフェが立ち並ぶ。これらが、買い物客を引き付けるようになった。夜にライトアップされた大聖堂を眺めながら、中世の街並みが残された中心市街地を歩くのは、本当にすてきな体験だ。

 2点目だが、LRTを中心に公共交通への投資が行われ、1980年代から現在に至るまで、独仏ともに多くの都市で路線拡張が行われてきた。人口増加で住宅地を拡張するときは、自動車交通を引き起こさないようLRTの延伸が義務づけられているからだ。

 これによって、郊外住民は迅速かつ定時性をもって中心市街地へのアクセスを保障される。中心部のショッピングセンターや商店街にとっては、LRTが市全域から買い物客を中心部に送り込む輸送手段として機能している。それなら、マイカーで来てもらう必要はない。

 他方でドイツは、都市郊外における大規模ショッピングセンターの立地を厳しく規制している。結果、市民はショッピングを楽しむなら中心部に向かうことになる。これは、都市のエネルギーを中心部に集中させる都市づくりの反映だ。

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