ドイツのLRTモデルが示す「宇都宮」の未来像 都市計画と公共交通の融合がもたらす新たな可能性とは?
日本とドイツとでは、中心市街地の「元気度・魅力」がまったく異なる。日本の場合、中心市街地は閑散としてシャッター街が広がる。ドイツは逆に、中心市街地が市民でにぎわっている。どうして、こうも違うのか。
都市間競争で優位を獲得する手段に

LRTを中心とする
・公共交通の整備
・中心市街地の活性化
に成功した都市は、明らかに魅力を向上させた。中心と郊外住宅、大学や企業の研究開発ハブが、迅速かつ定時性のある交通手段で結び付けられたからである。郊外の中間層は、緑が豊かで広い居住空間を享受しながら、同時に中心市街地の魅力にもアクセス可能となった。
LRTの整備を通じて自動車排ガスによる大気汚染は減少に転じ、時間を浪費する交通混雑も減少した。LRTは、その走行段階でCO2を排出しない乗り物だが、さらにその使用電力を再生可能エネルギー(以下、再エネ)で供給する取り組みも広がる。
こうした取り組みは、脱工業化時代のイノベーションを担う人材獲得をめぐる欧州連合(EU)域内の都市間競争で優位に立つ、決定的に重要な条件となる。なぜなら、上記のようなライフスタイルは、まさに知識経済を担う人々が好む都市の条件に合致するからだ。
日本では、2023年8月26日にLRTを開業させる宇都宮市が、欧州と同様の取り組みを行おうとしている点で注目される。これはJR宇都宮駅東口と郊外の工業団地/研究ハブを結ぶことで、朝夕の激しい交通渋滞を解消し、同時に大気汚染を改善することを目的としている。その使用電力は再エネで賄うことが計画されているほか、将来は中心市街地に延伸し、その活性化に寄与することが目指されている。