秋田新幹線「被災」で見えた、公共交通“効率至上主義”への疑念 これからは競争より協力の時代である
6日間の運休でも必要な「冗長性」

当初の報道では、秋田新幹線の運休は長引く見込み、とのことだった。線路がどうなっているのか立ち入りすらできない状況で、もしかしたら盛り土の流出や土砂崩れなどがあるのではないか、ということも考えられていた。田沢湖線区間なのか、奥羽本線区間なのかということも見当がつかなかった。
そんななか、東京から秋田への交通の便を図ろうとする動きが出てきた。まずは同じJR東日本である。新潟から秋田を結ぶ特急「いなほ」は2往復ある。残りは酒田止まりだ。酒田止まりの1往復を、秋田まで快速として延長した。
だがこれだけでは輸送力は足りない。多くの人は、秋田まで急いで行きたい。そこで飛行機、となる。
だが現在の国内航空路線は、大型機で多人数を一気に運んでしまうのではなく、中型機以下で細かく輸送需要に対応する方針を採用している。A321のような、200人も搭乗することができない航空機を地方路線では多く使用している。
現在は、飛行機の予約は早期に埋まりやすい状況にある。そうなると、今回のように急に多くの利用者が出たときに大変なことになる。
そこでANAは、B777-300という、国内線で500人以上搭乗可能な大型機を投入した。たまたまこの航空機が使用できたからこそ、秋田への多人数輸送が可能になった。
羽田空港から秋田空港までは、
・ANA:5往復
・JAL:4往復
である。中小型機材で運行される路線である。秋田新幹線が利用できなくなったということで、ここに予約が殺到した。
飛行機は機材を状況に応じて変えることがある。多客期は大きな飛行機にする、ということもある。鉄道が多客期に臨時列車を増発するのと同じだ。
ここで考えられるのは、公共交通機関には
「冗長性(余分や重複がある状態)」
が必要ということである。
どこかの公共交通機関で何かあった場合、ふだんはライバルとして価格や所要時間などを競い合っているほかの交通機関が、こういうときに協力し、必要な輸送力を確保することが大事である。
同じJR内、ほかのJR、高速バスや航空路線などがいざとなったら代わりを務めることができるような余裕を持っていることが必要だ。