移動がマーケットを作る? 航空大手「ANA」がユニバーサル化に注力する理由
ANAが中心となって産学官連携プロジェクト「Universal MaaS~誰もが移動をあきらめない世界へ~」を推進している。「Universal MaaS」とは何か。
障害者を特別視しない米国

先進事例のひとつは米国だ。米国には「障害を持つアメリカ人法(ADA)」という法律がある。きっかけは1988年に起きた、映画館に入ろうとした車いすの少女が車いすの使用を理由に入場を拒否された事件。
法律の成立前はビジネスコストの増加を懸念する反対もあったが、包括的差別撤廃法制定の機運が高まったこともあり、無事、制定に至った。ADA法の特徴はその適用範囲が
・労働
・余暇活動
・移動
・通信
など日常生活のあらゆる活動に及ぶことだ。
同法の施行で暮らしは大きく変わった。例えば、トイレは車いすの人もそうでない人も使える広い個室が設けられることになった。障害のある人を特別視して専用トイレなどの別室を作るのではなく、
「同じ空間の一部に組み込む」
ことで設置のための費用や時間をかけずに利用できるようになっている。
また、ホテルなどの宿泊施設や公共施設は、バリアフリーの対応状況をウェブサイトに記載するようになった。情報がない施設は、障害のある人を歓迎しない施設と見られてしまう。それくらい、バリアフリーは米国社会では浸透している。