移動がマーケットを作る? 航空大手「ANA」がユニバーサル化に注力する理由

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ANAが中心となって産学官連携プロジェクト「Universal MaaS~誰もが移動をあきらめない世界へ~」を推進している。「Universal MaaS」とは何か。

真の課題は「心のバリアー」

バリアフリーのイメージ(画像:canva)
バリアフリーのイメージ(画像:canva)

 米ADA法の影響を受けた日本では、2000(平成12)年に「交通バリアフリー法」、2006年には「バリアフリー新法」が施行された。

 バリアーは4種類あるとされる。

1.物理的なバリアー
2.制度的なバリアー
3.文化・情報面でのバリアー
4.意識上のバリアー

だ。バリアフリー法のおかげもあって、日本は世界で最も物理的に整備された国のひとつになったが、本当の課題は「3」と「4」であるといわれている。

それは国も認識しており、2020年のバリアフリー改正法では「心のバリアフリー」が明示された。

 さて、心のバリアーを取り除くには何が必要なのだろうか。

「一言でいえば相互理解です。障害者ではなく“○○さん”という関係性になることで自然と心のバリアーがなくなります」

と、ANA経営戦略室MaaS推進室チームの大澤信陽(のぶあき)氏。

 例えば、駅のエレベーターなら、利用するのは車いすユーザーだけではない。

・高齢者
・ベビーカーを押して外出する子育て中の人
・大きなスーツケースを持つ旅行者
・ちょっと休みたい人

も利用している。

 また、ホームドアは視覚に障害のある人や車いすユーザーの転落を防ぐためと説明されることがあるが、実際に事故が多いのは、酒に酔った人、体調不良の人やスマホ使用中の人である。駅や商業施設内の案内表示(ピクトグラム)も年齢や国の違いを超えた情報伝達手段として有効だ。絵文字の案内なら一見して内容を理解できる。

 これらの施策は自然の流れでできたものではなく、また、行政や企業の思いやりだけでできたものでもない。

「バリアフリー化やユニバーサル化を陳情してきた先駆者」

のおかげで今の社会ができている。現時点で移動に障壁も感じていない人も、実は既に受けているベネフィットがあるのだ。

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