岸田首相のウクライナ電撃訪問 政府専用機ではなく、なぜ「チャーター機」だったのか?
話題を呼んだ、岸田文雄首相のウクライナ電撃訪問。移動の空路で用いたのは政府専用機ではなく、民間のチャーター機だった。
事前に漏れたら中止の極秘ミッション
岸田文雄首相は3月21日、ウクライナを電撃訪問した。交戦中の国を首相が訪問するのは前例のない試みで、事前に訪問計画が漏れたら中止するという極秘ミッションだった。岸田首相は空路と鉄道を使ってウクライナ入りを果たしたが、空路で用いたのは外遊時に通常利用する政府専用機ではなく、民間のチャーター機だった。
岸田首相のウクライナ訪問は2023年に入ってから、たびたび取り沙汰されていた。1月には読売新聞が、岸田首相がウクライナ入りを本格検討していると報じ、2月20日に米国のバイデン大統領がウクライナ訪問を実現させると、先進7か国(G7)の首脳のなかで現地に足を運んでいないのは岸田首相だけとなった。
5月のG7広島サミットでは日本が議長国を務めるが、ロシアによるウクライナ侵攻が中心的な議題となることは間違いない。ウクライナ訪問の実現は岸田首相にとって沽券(こけん)にかかわる課題となっていた。
もっとも、戦火に直面している国の訪問は前例がないだけでなく、岸田首相自身の命にもかかわる問題だ。安全面を考慮すれば、ウクライナ訪問は事前に情報が明らかにならないことが前提だった。しかし、地理的にウクライナに近い他のG7の国と比べて、日本から秘密裏にウクライナ入りを実現させるのは至難の業だった。
日本からウクライナへ向かう場合、隣国のポーランドへ行くだけでも十数時間を要する。首相の動静が事細かに報道される日本で、首相動静が十数時間も途絶えれば報道各社は異変に気づく。
そこで浮上したのが、外遊先のインドからポーランドを経由し、陸路でウクライナへ向かう案だった。インドは日本よりヨーロッパに地理的に近く、外遊先の方が報道各社の態勢も手薄で好都合だ。