カンタス航空の2025年「世界最長航空路線」は成功するか? エコノミー席で“20時間拘束”という非現実性、燃費パフォーマンスも大丈夫か

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オーストラリアのカンタス航空が2022年5月、“世界最長路線”となる定期便を2025年末に就航すると発表した。フライト時間は約20時間。成功するのか。

日本の国際線、最長路線は「メキシコ」

成田空港(画像:写真AC)
成田空港(画像:写真AC)

 現在運航している日系航空会社の最長路線は、全日本空輸の成田~メキシコシティをつなぐNH180便だ。

・飛行距離:約1万1270km
・飛行時間:14時間45分

となっている。

 ちなみに、日本の真逆に位置するサンパウロまでの距離は約1万8500kmで、もしも2国間をつなぐ直行便が就航すれば世界最長路線となる。

 日本~ブラジル間は、2010(平成22)年まで日本航空がニューヨーク経由でのフライトを飛ばしていた。惜しまれつつも、会社更生手続きのなかで路線は廃止されたが、日系ブラジル人の需要はもちろん、日本企業も多く進出していることから、観光以外のビジネス面でも高需要が見込まれるだろう。

 もしも需要と採算が見合えば、将来、直行便として復活……ということもあるかもしれない。

コスト管理の徹底がカギ

カンタス航空のキャンセル率(画像:カンタス航空公式ツイッター)
カンタス航空のキャンセル率(画像:カンタス航空公式ツイッター)

 長距離路線は短距離路線と比較して、

・着陸回数の差
・空気抵抗の少ない高高度(地上7000~8000mから1万mくらいまでの高さ)の飛行

のため、燃料パフォーマンスはよいとされている。しかし飛行時間が長ければ長いほど必要な搭載燃料は増加する。そして

「増加した燃料分の重量」

に対しての追加燃料が必要となることは忘れてはならない。最新機材は燃費パフォーマンスがよいといっても、超長距離線となればその量はばかにできない。

 現在世界最長路線を運行するシンガポール航空のA350-900ULRの座席クラスはビジネスクラスとプレミアムエコノミーのみの161席で、エコノミークラスの設定はない。これは機内の快適性を高める名目とは別に、「乗客ひとり当たりの利益率」を高めるとともに、

「機体の軽量化」

という目的もあるのだろう。

 現在、各航空会社が最新機材の投入やエンジンの効率化、最適な飛行計画などを使って燃費パフォーマンスの向上努力を続けている。国際的なCO2排出量削減の取り組みもあり、この先よりその流れは強くなる。

 超長距離路線の需要は確実に高い。2025年、世界中の航空会社、航空関係者はカンタス航空のチャレンジを期待しながら見守ることになる。

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