危険すぎる京成本線荒川橋梁 周囲より「3.7m低い」堤防で首都水没危機、しかも工事が2037年度まで終わらない

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京成本線の荒川橋梁は都内の荒川「最大の弱点」とされている。いったいなぜか。

架替完成は「2037年度」

京成本線荒川橋梁周辺の段彩陰影図。標高の低い部分が青色(画像:国土地理院)
京成本線荒川橋梁周辺の段彩陰影図。標高の低い部分が青色(画像:国土地理院)

 京成本線荒川橋梁の架替を行い堤防もかさ上げする事業は、2004(平成16)年より始まっているが、

・用地買収難などによるルート変更
・事業費の高騰

などもあり、橋梁・堤防工事には手がつかない状態が続いた。令和元年東日本台風の翌年から、江東5区長(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の各区)が連名で再三にわたり(ほぼ毎年1回)架替事業推進の要望書を国(国土交通省)に提出している。

 そしてついに2023年2月4日、京成本線荒川橋梁架替の起工式が現地で行われた。斉藤鉄夫国土交通省大臣のあいさつもある本格的な式だった。だが、筆者は完成の時期を聞いて、一瞬聞き間違えたかと思った。それはなんと

「2037年度」

というのだ。14年も後である。そんなのんきなことを言っている場合ではないはずだ。

危険箇所となったワケ

1930(昭和5)年測図の地図。まだ京成本線荒川橋梁の姿はない(画像:国土地理院)
1930(昭和5)年測図の地図。まだ京成本線荒川橋梁の姿はない(画像:国土地理院)

 繰り返すが、地球温暖化でスーパー台風が関東地方を襲う確率が高まっている。

 国土交通省関東地方整備局の施設である荒川知水資料館(東京都北区)では、荒川沿いの地形、洪水の歴史、動植物、防災などに関して映像やパネルで紹介しているが、そこでも、現在の京成本線荒川橋梁の危険性と架替橋梁の概要等がひとつのコーナーを設けて強調している。専門家も含め多くの関係者が問題視しているのに、この遅々とした現状にあきれるばかりではいられない。

 そもそも、なぜこの橋梁が危険箇所となったのだろうか。京成本線荒川橋梁は、1931(昭和6)年に完成し、この時点では堤防は高く築かれていた。だがこの頃から1970年代に至るまで、東京の下町、特に荒川下流部を中心に、地盤沈下が発生した。

・多数の工場による地下水の大量くみ上げ
・地中の天然ガス(メタン)採取

が原因である。広範囲にゼロメートル地帯、すなわち海水面より低い地域が発生し、この橋梁部分でも3.4mも地盤が沈下してしまったのだ。

 地盤が沈んでも、川の水面の標高はさほど変わらない。したがって堤防と橋脚・橋げたは川の流れに対して相対的に低くなってしまった。

 対策として一帯の堤防をかさ上げしたものの、線路が横切る橋の部分の堤防は高くできないので、この部分だけ堤防が低いままとなってしまったわけである。

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