私がどんな「燃料電池車」にも、いささかも同意できない4つの理由

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21世紀に入った頃、20年後くらいに自動車はFCVへと移行するという見解が少なくなかった。しかしなぜ実現しなかったのか。

1月の国内登録台数は29台のみ

MIRAI(画像:トヨタ自動車)
MIRAI(画像:トヨタ自動車)

 一方、実際に試乗した上での実車に対する多くの好意的な感想とは裏腹に、その普及は全く進んでいないのは周知の事実である。

 直近の2023年1月の燃料電池乗用車の日本国内登録台数はわずかに29台。全てトヨタMIRAIである。過去の状況を振り返っても、年間国内販売台数は乗用車のほかに、バスなどの商用車を含めてもおおむね500~600台レベルであり、唯一の例外としては2021年には2464台を数えたが、これはトヨタMIRAIのフルモデルチェンジが理由だった。2464台の内訳は

・MIRAI:2438台
・ホンダ・クラリティ・フューエルセル:12台
・輸入車:14台

というものだった。

 FCVがここまで苦戦している背景には、その価格が高価過ぎるという声をよく耳にする一方、メーカー側もその辺りは心得たもので、MIRAIなどは車両の基本仕様自体を極めてプレミアム性の高い高級セダンとしている。

 その価格はおおむね

「700~800万円」

となっているが、プレミアムセダンであるということを思えば、法外に高いというレベルではない。いわゆる新しいモノ好きの富裕層には十分に訴求力があるレンジである。

 現行MIRAIが初年度に2000台以上を売り上げたのは、官公庁需要に加えてそうした富裕層が購入したと考えられる。

水素ステーション拡充にも課題

ネッソ(画像:ヒョンデUSA)
ネッソ(画像:ヒョンデUSA)

 FCVのイニシャルコスト(初期費用)はそれなりの企業努力とともに下がって来ているのは間違いない。一方でランニングコスト(維持費用)と日常の使用をサポートする燃料供給インフラの整備となるといまだにその見通しは明るくない。

 FCVの燃料は水素だが、東京を中心とする首都圏での水素ステーションの整備こそ進んではいるものの、その数は2023年1月末の次世代自動車振興センターの統計によると、

・関東圏:58か所
・中京圏:49か所
・関西四国圏:19か所
・九州圏:15か所
・その他:20か所

と、いわゆるガソリンスタンド数のレベルには程遠い。北海道などは3か所、北陸も3か所のみ、東北北部には1か所もない。これではいくら新しいモノ好きとは言っても地方の住人がFCVを購入してみようなどとは思わないだろう。

 もちろん、関係各所も水素ステーションの拡充の重要性は認識しているのだが、建設費用に加えて維持費用も考えると、ある程度の需要が見込めないところには建設できず、建設できないがゆえに車両の普及が進まないという、完全な悪循環に陥っているというのが現状である。

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