タクシー15年ぶりの値上げで売り上げ増も ドライバーがっくり「歩合改訂」事情
15年ぶりに都内のタクシー運賃が値上げされ、売り上げも増えた。それなのに多くのドライバーは浮かぬ顔をしている。なぜなのか。
働けど働けど暮らし楽にならず
春闘が本格化している。2022年の賃金の状況を振り返っておくと、同年末に厚生労働省が公表した「賃金引上げ等の実態に関する調査」では、2022年中における賃金改定の実施状況は「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合が85.7%(2021年80.7%)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」が0.9%(同1.0%)などとなっている。
物価の上昇もあって実質賃金はマイナス傾向だが、今回の春闘で賃金アップを公言している企業もある。どれだけの企業が、労働者の希望を受け入れてくれるであろうか。
そんな中、タクシー業界はひと足先に賃金アップのチャンスを迎えていた。タクシードライバーは早めの春を迎えることができていたのか。
2022年11月、東京都内のタクシー運賃改定が15年ぶりに行われた。運賃改正当初は値上げによる乗り控えがあると思ったが、年末年始の忙しさもあり、心配される乗り控えはなく、予想に反しての売り上げ増があった。年明け以降も順調に来ている感がある。
コロナ禍で耐え忍んだドライバーたちの給料に、明るい兆しが見え、今までの分を取り戻そうとやる気をみなぎらせ、活気が業界内に広まった。
しかし、そうは問屋が卸さないのが世の常だ。多くのタクシー会社が、売り上げが上がった分、歩合率(歩率)の改定に動き出した。上げるのではなく、下げたのだ。たとえ売り上げが伸びても、給料は比例して増えることはない。ドライバーの喜びもつかの間、肩を落としている。