タクシー15年ぶりの値上げで売り上げ増も ドライバーがっくり「歩合改訂」事情

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15年ぶりに都内のタクシー運賃が値上げされ、売り上げも増えた。それなのに多くのドライバーは浮かぬ顔をしている。なぜなのか。

歩合で決まるタクシードライバーの賃金

タクシー(画像:写真AC)
タクシー(画像:写真AC)

 歩合で給料が決まる要素が大きいタクシー業界。たかだか数%の歩率のダウンで数万円の差も出てくる。タクシードライバーの給料体系はどのようなものか、あまり一般的に知られていないが、大きく分けて、次の3パターンがある。

・A型賃金
固定給+歩合給+各種手当+賞与

 固定給に加えて、歩合給、家族手当、住宅手当などの各種手当や賞与(ボーナス)、退職金、福利厚生が備わり、一般企業のサラリーマンに近い賃金体系。新人のタクシードライバーや、ゆとりをもってタクシー業務をしたい人には安心できる給与体系だ。固定給をもらいながら自身のスキルを高めることができるが、高額収入はあまり望めない。会社にもよるがノルマがあり、その額を下回った月に固定給が減額されるケースもある。

・B型賃金
歩合給/完全歩合制

 歩率が高く、自身が稼いだ分だけ給料に反映されるシンプルな賃金体系。売り上げの50~64%が収入となり、会社によっては売り上げが高いほど、歩率を高く設定しているところもあり、ドライバーの頑張りがそのまま給料に反映される。その半面、新人ドライバーや売り上げが少ないドライバーにとっては厳しい制度で、給料が不安定になる恐れもある。

・A+B型賃金
 A型賃金とB型賃金を合わせた給与体系。どちらかというとB型賃金がベースとなっているところが多い。B型賃金との違いは、歩合の一部が毎月賞与として積み立てられ、年数回に分けて支給される点だ。

 歩率は業界内で決まりがあるわけでなく、タクシー会社によってまちまちである。多くの会社が、B型かA+B型賃金だ。例えば、同じ月80万円の売り上げでも、タクシー会社によって給料が違う。どのタクシー会社に勤めるかで収入に差が出る世界なのだ。少しでもいい歩率の会社を求めて、タクシー会社を転々とする人もいる。

 タクシー業界では、歩率アップがちまたでいうベースアップである。今回の歩率改定により、2023年のタクシーの“春闘”は終わったようなものだ。

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