CO2を水素で「メタン化」 船のゼロエミッション燃料に 商船三井など9社が技術論文
供給インフラや経済性などは今後の検討課題
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、産業活動で排出したCO2を分離・回収し再利用するカーボンリサイクルの重要性が高まっている。
今回の理論のカギとなるメタネーション技術により作られた合成メタンは、燃焼させると通常のメタンと同様にCO2が発生するが、分離・回収したCO2と相殺されると考えられるため、将来的に、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解して生成した水素を利用すれば、CO2の排出を大幅に削減したとみなすことができる。
WGは、産業活動で排出したCO2の分離・回収、CO2輸送、メタネーション燃料合成、メタネーション燃料液化の4プロセスを想定し評価を実施。その結果、メタネーションによるカーボンリサイクルメタン燃料の単位熱量当たりCO2排出量は、約27-gCO2/MJになったという。この数値は、一般にゼロエミッション燃料として認識されている他の代替燃料候補と比較して遜色ない水準であり、カーボンリサイクルメタンがゼロエミッション燃料になり得ることが確認されたとしている。
なお、この数値は、効率の改善や再生可能エネルギー由来の電力利用などで、約20-gCO2/MJまで削減できることが見込まれるという。
19日(月)に9社が合同開催したオンライン発表会で、日立造船機械事業本部の泉屋宏一氏は「15万トンのCO2は、メタネーション技術により5.5万トンのメタンに変えることができる」と説明する。
2018年4月、国際海事機関(IMO)は、2030年までにCO2排出量を効率ベースで2008年比40%削減、2050年までにGHG排出の総量を2008年比で半減、21世紀中のなるべく早期に国際海運からの温室効果ガス排出をゼロとするという目標を設定した。
今後の取り組みについて、商船三井の理事で技術部担当執行役員補佐の大藪弘彦氏は「温室効果ガスの削減目標がある一方で、カーボンリサイクルメタンの船上での燃料燃焼による排出量算定ルールは未整備でるため、今後は再生可能エネルギー由来水素の供給や大型CO2輸送船の技術、液化したメタネーション燃料の供給インフラ、経済性などの実現可能性を検討していく」としている。