EU「ガソリン車35年禁止」という耐えられない採択の軽さ 脱炭素で原発対応どうする 結局、中古内燃・HV人気にならないか

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欧EU欧州議会は2035年までに二酸化炭素を排出するガソリンエンジンやディーゼルエンジンを使うクルマのEU加盟国内での新車販売を禁止、新車販売は事実上EVのみとするという法案を採択した。

沈静化後に襲ったウクライナ侵攻

フランス・ストラスブールの欧州議会ビル(画像:pixabay)
フランス・ストラスブールの欧州議会ビル(画像:pixabay)

 すなわち、将来的に自動車市場がEVへと向かう大まかな流れは遮ることはできないものの、だからといってイケイケドンドンな空気のなかでむやみに流れに身を任せていれば良いはずもなく、国や地域、個々のメーカーの状況を無視した急激な変更は下手をすれば経営上の大きな障害になりかねないという、ある種の心理的なブレーキが掛かったということである。

 その結果、今まで培ってきた内燃機関とその周辺技術を果たして捨て去ってよいのか――という意見が複数のメーカー間で出始めたことで、将来に向けてEVメーカーとして新たな道を目指すことを選択したメーカーと、一度立ち止まって状況を冷静に見極めるメーカーというふたつの図式が顕在化した。

 前者は

・メルセデス・ベンツ
・ジャガー/ランドローバー
・ボルボ
・ジェネラルモータース
・フォード

で、後者は

・トヨタ
・フォルクスワーゲン
・ルノー/日産/三菱アライアンス
・ステランティス

勢力的には見事に二分されることとなった。

 ちなみに2021年末の時点で、各自動車メーカーにおけるEV戦略については

「取りあえず開発は進めるが普及は各国の状況に合わせてそれなりに、基本は自社の経営が最優先」

というスタンスが主流となり、EUや国連による急激な旗振りはひとまず沈静化することとなったが、翌2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻で、新たな動きが生じることとなる。

 2022年5月18日、かねてEU圏内における原油や天然ガスといったエネルギー供給に関して、ロシアへの過大な依存を懸念していたEU首脳は、ロシアへの経済制裁の一環として「リパワーEU」という新たなエネルギー政策を発表する。

 これは脱炭素と再生可能エネルギーを骨子とするとともに、ロシアによるエネルギー支配からの脱却を2030年までにという早期のタイミングで目指したものだ。時期的に見て事実上EVに関連するもろもろの政策もこの中に包括されるものだったことは間違い無い。

 こうして、EUにおけるEV推進戦略はロシアの暴走とともに再び加速し、今回の決定に至ったということである。

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