EU「ガソリン車35年禁止」という耐えられない採択の軽さ 脱炭素で原発対応どうする 結局、中古内燃・HV人気にならないか

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欧EU欧州議会は2035年までに二酸化炭素を排出するガソリンエンジンやディーゼルエンジンを使うクルマのEU加盟国内での新車販売を禁止、新車販売は事実上EVのみとするという法案を採択した。

立ちはだかる根源的な問題

EV充電のイメージ(画像:写真AC)
EV充電のイメージ(画像:写真AC)

 とはいえ、自動車メーカー側の対応策は以前から大きくは変わってはいない。EVに関する技術も全固体電池の開発状況を見るまでもなく、ドラスチックな変化は起こっていない。

 こんな状況で果たして2035年をめどにEU圏内での新車販売を全EV化することなど可能なのだろうか。そもそも一口にEUと言っても、加盟各国間での経済格差が問題とされて久しい。加えて、現状でのEVは補助金等の恩恵を受けているとはいえ、その価格は安くはない。

 今後、価格の安いモデルが、例えば中国などから供給されるようになったとしても、東ヨーロッパの小国などで、新たなインフラ構築(充電設備そのほか)が十分なレベルで可能なのだろうか?

 また、全てのEVに対して十分な電力を再生可能エネルギーだけで賄えるのか?

 脱炭素という意味では申し分のない原子力発電への各国対応はどうなるのか?

 ついでに、EVの製造や電力供給インフラ構築を脱炭素の再生可能エネルギーだけで行うことができるのか?

という根源的な問題さえも立ちはだかってくる。

EU全域の波及は困難か

ヨーロッパ(画像:pixabay)
ヨーロッパ(画像:pixabay)

 また、自動車産業とは新車の製造と販売だけで成り立っているわけではない。作って販売したクルマは残らずいつかは廃車となるし、それ以前に中古車として流通することで新たな市場を作る。

 中古車への部品の供給、メンテナンス、リサイクル、リユース。今後EVがメインとなればその全てに影響が出る上に、それに対応しなければならないのは中小企業である。結局フタを開けてみれば、

「新車のEVではなく、中古の内燃機関車やハイブリッド車の人気が高まりました」

などと言うことにもなりかねない。

 あくまで個人的な見解だが、今回EUが採択した法案は、仮に成立し施行されたとしても当初は先進国を中心とした限定的かつ、拡大もおだやかなものとならざるを得ず、最終的にはEU全域に波及することは難しいと思われる。

 その前に、現在EUに加盟している国のなかからEVシフトに耐えられずに脱落するものが出ることも十分に考えられる。それほどまでに今回の法案は過激だということである。

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