「サボって買い食いするな」 休憩中の救急隊員に浴びせられる中傷の数々、“制服仕事”を標的にするのは卑怯だ
救急隊への心ないクレームが各地の自治体や消防署に寄せられている。彼らのような「制服」仕事は標的となりやすいのだ。
救急隊に寄せられる理不尽なクレーム

ここは神奈川県川崎市の総合病院。院内のコンビニに掲示された1枚のチラシには、かわいらしいマスコットキャラクターのイラストとともに大きくこう書かれていた。
「救急隊は連続する救急出場により、飲食が摂(と)れない場合があります。そこで、ご理解をいただいた病院の売店や自動販売機で飲食物を購入し、飲食を摂ることにしました。出場体制は維持しておりますので、皆様のご理解とご協力をお願いします」
筆者(日野百草、ノンフィクション作家)は悲しくなった。なぜこんなことまで書かなければならないのか、と。もちろんこうしたチラシを何度も大規模病院のいわゆる「院内コンビニ」で目撃している。まだこんなお願いをさせてしまっている。私たちのために、この国のために日夜「生きるか、死ぬか」の命を運び続けている救急隊だというのに。まして2020年以降のコロナ禍は、彼らの任務をさらに過酷なものとした。
それでも、いまだに
「サボって買い食いをしている」
「俺たちの税金で食ってるくせに」
「コロナがうつるので(救急隊は)店に入ってほしくない」
という心ないクレームが各地の自治体や消防署に寄せられている。もちろん、ほとんどの国民は彼ら救急隊の日ごろの献身と苦労、そして私たちにとっての「ありがたみ」をよくわかっている。しかしごく一部に人間によって、その「社会の当たり前」が崩れてしまうことも事実である。
多くの賛同や感謝はその数ほどには世間に反映されない。届きやすいのはごく一部の目立つ中傷とクレーム、というのが現実だ。