EVが運転禁止? 昨年大騒ぎになった、スイス驚異の「節電対策」とは
昨年、スイス連邦評議会で検討されていた電力不足に対する条例の草案が物議を醸し出していた。いったいなぜか。
スイスならではの背景も
このスイスの節電対策について、ヨーロッパの近隣諸国は「スイスならではのもの」と冷静に見ている。というのは、スイスは冬季の電力不足分を輸入に頼っているからだ。
スイスは、2021年の実績によると、約6万GWhの電力を主に水力、原子力により起こしている。年間を通じてみると、冬季は不足分をフランス、ドイツ、オーストリアからの輸入に頼っているものの、電力需要が緩む夏季は余剰電力を輸出する特殊な構造にある。
また、スイスは電力需給が逼迫する冬季に電力の輸入に依存しているだけでなく、欧州連合(EU)各国と電力協定を締結していないため、緊急時に電気の輸入がストップするリスクを抱えている。この点において、近隣のEU各国と冬季の電力に関する状況が異なっており、より実効性の高い対策が求められているのだ。
スイス連邦評議会の見解
スイスは、これまでも冬季の電力不足に向けて、発電所の予備の確保や送電網の電圧の上昇など、電力供給のセキュリティー対策を講じるだけでなく、省エネキャンペーンや省エネアライアンスへの企業の参加をはじめ、自発的な節電対策など行ってきた。
スイス連邦評議会は、
「今回の条例の草案は、これまで講じてきた対策にもかかわらず電力不足が生じた時に、さらなる事態の悪化と厳しい対策を回避することを目的としている」
と、ホームページ上においてメッセージを発信している。
つまり、今回の電力不足に対する条例の草案は、より深刻な電力危機に際してのプランB、プランCを、国民にあまねく周知したものである。「草案にすぎない」という意見はある意味では正しく、さらにいえばEVの使用禁止だけが目立って報道されすぎた感は否めない。