公用車はなぜ「センチュリー」一択だったのか 過去20年で大変化した車種、そもそも高級車の必要性はあるのか
わかりづらい公用車の使用ルール
大阪市の松井一郎市長は市役所を退庁後、公用車で自宅へと戻っていた。しかし、帰宅途中に通い詰めている温浴施設へ頻繁に立ち寄っている。激務の疲れを癒やすために温浴施設に寄ることを否定するつもりはないが、公用車で温浴施設に乗り付けるのは私的利用にあたるのではないか――そんな指摘もなされた。
このあたりの構図は、舛添都知事と同じだ。松井市長は「温浴施設は自宅までの経路上にあり、効率を考えれば私的利用にあたらない」とした。舛添都知事と松井市長の公用車の使用例を見る限り、公務と私用の区別をつけることは難しい。
さらに、事情を複雑にするのが公務と政務の区別だ。公務と政務はどちらも政治活動に分類されるが、前者が公務員としての仕事であるのに対して、後者は政党人としての職務にあたる。わかりやすい例をあげるなら、選挙活動は公務にあたらない。政務にあたる。公用車は、あくまでも公務を遂行するためにあてがわれるので、本来なら選挙活動のために公用車を使うことはNGと解釈できる。しかし、実際は自身が所属する政党の会合や後援会の集まりに公用車で乗り付ける政治家は少なくない。そのほかにも、選挙の街頭演説やほかの候補者の応援演説に公用車に乗って駆けつける政治家もいる。
私用との線引き以上に、公務と政務の区別はつきづらい。また、これらを厳密に線引きしてしまうと政治家の活動は非効率になる。それは、政治活動を制約することにもつながるので、そのあんばいは難しい。
政治家の公用車使用に関しては、テレビ・新聞・週刊誌などで取り上げられる機会は少なくない。そのため、有権者の目は行き届きやすいが、公用車は政治家だけが使用しているわけではない。事務次官や長官といった幹部クラスの官僚も使用している。官僚の場合は、有権者のチェックが届きにくい。まして、政治家のように選挙もないから、世間体を気にする必要はあまりない。選挙で落選させることもできない。
繰り返しになるが、公用車の使用ルールは非常にわかりづらい。行政府・立法府で異なるし、国政・地方でも異なる。また、線引きも曖昧。類型化もできないから、これらの議論も複雑になる。
わかりづらいので、公用車の議論は感情論になりやすい。感情論に流されてしまえば、いつまでたっても公用車の運用に最適解を探れない。とはいえ、そうした感情論を全否定することもできない。公用車に対して関心を常に払うことは、有権者にとって重要な“仕事”のひとつでもあるだからだ。