公用車はなぜ「センチュリー」一択だったのか 過去20年で大変化した車種、そもそも高級車の必要性はあるのか
公用車トレンドに通底する「環境配慮」
山口県が購入したセンチュリーは高級車の代表格といえる自動車だが、2000(平成12)年頃まで「公用車 = センチュリー」という固定概念は強かった。
これは、政治家が金持ちぶって高級車に乗りたがっているからという理由ではない。そうした意識を内在していた政治家がいたのも事実だが、政治家は危険と隣り合わせの職業だから安全性の高い自動車が選ばれる。公用車として使われるセンチュリーは、通常のセンチュリーではなく、安全性や快適性を高めた改造が施されている。そうした改造は、一般的に高級車と呼ばれる車種でないと引き受けてもらえない。こうした理由から「公用車 = センチュリー」の時代が続いた。
とはいえ、あくまでも改造されるのは内装のみとなる。外装をいじると、有権者から「税金の無駄遣い」「当選したら、手のひらを返して威張るようになった」というそしりを受けるようになるからだ。それらの非難を受けないためにも、外見はいじらないし、カラーリングも黒やシルバー、白といったスタンダードな色が公用車には好まれる。
公用車をめぐる環境は、行政改革が強く叫ばれるようになった2000年前後から変わっていく。最近の公用車は世間の目を意識して、センチュリーからレクサスへと変更する傾向が見られる。
筆者(小川裕夫、フリーランスライター)は永田町・霞が関の取材歴が15年以上あり、たびたび首相官邸や国会議員会館、政党事務所などに足を運ぶ機会があるが、そうした長い取材経験を通じて振り返ってみると、国会議員が使用する公用車にもトレンドのようなものが存在する。
公用車のトレンドに通底しているには、環境に配慮しているということだ。2010年前後の永田町では、三菱のi-MiEV(アイ・ミーブ)を目にすることは多かった。その後は日産のリーフが増え、トヨタのプリウスが増える傾向が見られた。
政治家が世間を意識して環境に配慮する姿勢を見せても、変わらない傾向もある。それが、国内メーカーの自動車に乗るということだ。公務・政務に限れば、ベンツやBMWといった外車に乗って政治活動をしている国会議員は見たことがない。
厳密には公用車とはいえないが、選挙カーで外車に乗っていた政治家・立候補者はいた。2019年に港区議に当選したマック赤坂さんや2020年の東京都知事選に立候補したスーパークレイジー君さんは、選挙カーに外車を使っていたことがある。
スーパークレイジー君さんは都知事選後では外車を使用したものの、2022年の戸田市長選では外車を使っていなかった。前述したように、首相や政務三役などは公用車が用意されているが、これらは行政府の構成員という立場だからだ。国会議員は立法府の構成員となるので、全員に公用車が用意されているわけではない。