タクシー運転手のさまざまな「前職」 彼らの奥深き半生に耳を傾ける

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タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、運転手の「前職と転職」について。

全く違うタクシー業界を選んだ理由は

街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)
街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 潜水の仕事から離れた理由は、潜水の仕事で知り合い、全国を渡り歩き、苦楽を共にした、同僚ふたりの相次ぐ死だった。

 3人で仲良く会社を経営していたが、そのうちのひとりOさんは、北方領土歯舞諸島の貝殻島付近で潜水中に行方不明になった。ウニ漁に従事中だった。

 多分、速い潮に流されたのではないかという。同時期に、もうひとりのSさんは、釧路漁港で漁船のスクリュー掃除の際、ひどい事故に巻き込まれた。

 それでKさんは前途が真っ暗になった。ふたりの葬儀や身辺整理をひとりで取り仕切り、さらに会社の蓄えを全部洗いざらい遺族に渡して、会社をたたんだ。もう、全く別の仕事を、と思い、東京のタクシー会社の門をたたいた。

 Kさんは下戸だが、死んだ他のふたりは大酒飲みだった。それも強い焼酎だ。ただ仕事になると、真剣で真面目。手抜きは一切しなかった。彼が語る海の男の友情は、どこまでも熱かった。

※ ※ ※

 筆者はタクシー会社の勤めだが、ドライバー歴を積んで個人タクシーへと移っていく人も多い。個人タクシーには、個性的な運転手も少なくない。堅いファンが付くこともある。それは、上記で紹介したような前職での経験によるところも大きいのかもしれない。

 もし長距離のタクシーに乗る機会があれば、暇に任せて運転手の話に耳を傾けてみるのも面白いかもしれない。

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