「歩行者 = 絶対正義」時代の終焉か 信号無視から歩きスマホまで、近年増加するモラルなき起因事故を注視せよ

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これまで「交通弱者」とされていた歩行者。しかし、「何があろうと自動車が悪い」というコンセンサスは覆ろうとしている。いったいなぜか。

歩行者を起因とする事故の問題化

タクシー(画像:写真AC)
タクシー(画像:写真AC)

 もちろん歩行者も当たり前の話だが、道路交通法は守らなければならない。道路交通法では「歩行者の通行方法」として、次のように定められている。

第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。
2 歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。
一 車道を横断するとき。
二 道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。
3 前項の規定により歩道を通行する歩行者は、第六十三条の四第二項に規定する普通自転車通行指定部分があるときは、当該普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めなければならない。

また、「横断の方法」および「横断の禁止の場所」は次のように定められている。

第十二条 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によつて道路を横断しなければならない。
2 歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。
第十三条 歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2 歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。

 信号無視や斜め横断は2万円以下の罰金か科料となるが、現実には、これまで自動車やバイクのように積極的に取り締まられることは少なかった。しかし、昨今の歩行者を起因とする事故の問題化によって、より重い過失割合となるケースも出てきた。

歩行者に求められる義務と責任

横断歩道(画像:写真AC)
横断歩道(画像:写真AC)

 例えば、2021年の高知市のケースでは、子どもを抱いたまま片側2車線の直線道路で赤信号を無視して渡った歩行者の男性と、バイクを運転していた男性が接触、バイクの男性は重症で、警察は歩行者の男性を重過失傷害容疑で書類送検した。繰り返すが歩行者優先は当然である。しかし、もはや交通弱者として何もかも許される時代ではなくなったように思う。

 また道路交通法上の違反ではないが、大音量で音楽などをイヤホンで聴きながら車やバイクに接触する歩行者も増えている。東京消防庁によれば2020年までの5年間で196人、その中の8割超が歩行者で、意外なことにこうした事案になると悪者の自転車は2割未満である。

 また、いわゆる「歩きスマホ」も同様で、こちらは地域によっては条例で定められているが、実際は野放しなのが現実だ。こうした個々の歩行者のモラルに委ねたがゆえの事故もまた、歩行者に対する取り締まりの強化につながっている。

 歩行者もまた道路交通法の適用を受ける交通の一員である。便宜上、交通弱者とされることもあるが、実際は道路交通上、歩行者として一定の義務と責任が定められている。筆者(日野百草、ノンフィクション作家)もあまりにひどい歩行者を都内でよく目にするが、自分の命はもちろんのこと、相手の自動車やバイクも危険な歩行者の違反の巻き添えで命を失いかねない。

 歩行者優先は決して「俺さま優先」ではないのだ。

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