JR東日本「羽田空港アクセス線」は成功するか? 空港利用者囲い込みの最強手段も、背後に透ける“巨象”の危機感

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2029年度完成を目指し始まった「羽田空港アクセス線」の工事。その効果はいかほどか。

「鉄道」から「サービス」への大転換

JR東日本が2018年に発表した中長期経営計画「グループ経営ビジョン『変革2027』」(画像:JR東日本)
JR東日本が2018年に発表した中長期経営計画「グループ経営ビジョン『変革2027』」(画像:JR東日本)

「変革2027」には“巨象”の危機感がにじみ出ている。

 家業の鉄道だけでは将来経営が成り立たなくなることが確実だからだ。分割民営化の1987年当時と30年後の2017年、そして10年後の2027年では取り巻く経営環境がガラリと変わると指摘し、まず会社発足からの30年間は本業の鉄道をベースに

・インフラや技術/知見の発展
・サービスのレベルアップ
・再生/復権

に軸足を置いて来たと振り返る。

 だが、人口減少や少子高齢化で鉄道収入の根幹である定期券収入の増加は今後期待できないと断言する。加えて、働き方や豊かさに対する価値観の変化・多様化がこれに重なり、これまた鉄道利用者減に拍車をかけると推測する。

 これを踏まえ、2027年までの10年間は「ヒトが生活するうえで『豊かさ』」を追求することを起点として、鉄道路線というリアルなネットワークと交流拠点の「駅」を武器に新しいサービスを創造し、新たな価値を社会に提供していくとする。鉄道輸送会社から

「鉄道インフラを使った総合サービス会社」

へと変身する覚悟を決めた瞬間で、くしくも「変革2027」発表と同じ2018年の新年早々に、トヨタ自動車の豊田章男社長が「自動車メーカーから移動サービス全般を担う会社に変わる」とぶち上げて世間をあっと言わせたが、「変革2027」はこれに少なからず影響を受けたに違いない。

 事実、JR東日本の年間連結営業収益に占める「運輸」「非運輸」の割合は、会社発足当初(1987年度頃)の「9対1」(総額約2兆円)が、2017年度には「7対3」(同約3兆円)と運輸部門の比率は低下し、さらに2027年度にはこれが

「6対4」

となる想定する。

 このため、生活サービス事業やIT・Suica事業に経営資源を重点的に振り向けて新たな成長エンジンとする方針だ。これまで同社の収益の源泉だった鉄道は、中心としつつも輸送サービス全般を質的に変革し、進化・成長させていくことが喫緊の課題と訴える。

 現行の中長期経営計画の中で、鉄道から非鉄道への軸足変更を鮮明に掲げたJR東日本にとって、羽田空港アクセス線への注力は一見矛盾に思えるが、

「羽田空港利用者を囲い込むための強力なインフラ」

と考えれば合点が行くだろう。

「羽田」を巡っては、東急電鉄と京浜急行が計画する「蒲蒲線」や、JR東日本の完全子会社・東京モノレールの将来、りんかい線のJR東日本による企業の合併・買収(M&A)問題などさまざまな事案がうごめいている。

 また「変革2027」の推進途中で「コロナ禍」という超ド級の予期せぬイベントリスクが発生し、JR東日本を始め全鉄道会社が赤字転落したのは周知のとおりで、しかもこれに追い打ちをかけるかのように「ロシアのウクライナ侵略」が発生、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の状況や、国際情勢次第では「鉄道利用者激減」という悪夢の再来は避けられず、「ドル箱」と期待していた羽田空港アクセス線は空気を運ぶだけの閑古鳥が鳴く状況に陥る可能性もある。現に同社の「成田エクスプレス」(NEX)や京成電鉄の「京成スカイライナー」がこの状況に苦しんだ。

 今のところ、新型コロナウイルスのパンデミックは抑えられ、国内旅行も復活し、インバウンドへの水際対策も撤廃されるなど、かつての活気を取り戻しつつある鉄道業界だが、羽田空港アクセス線計画からはまだまだ目が離せないだろう。

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