JR東日本「羽田空港アクセス線」は成功するか? 空港利用者囲い込みの最強手段も、背後に透ける“巨象”の危機感

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2029年度完成を目指し始まった「羽田空港アクセス線」の工事。その効果はいかほどか。

3本に枝分かれするアクセス線構想

羽田空港アクセス線構想計画案(画像:JR東日本)
羽田空港アクセス線構想計画案(画像:JR東日本)

 ところで同社が描くアクセス線構想、実は田町~羽田ルートのほかに2本の分岐線が存在する。具体的には、

1.東山手ルート:前述の「東京駅直結ルート」
2.西山手ルート:同貨物ターミナル駅から地下で西に折れて品川シーサイド駅の南部分で東京臨海高速鉄道(りんかい線)と接続しJR埼京線(JR山手線)に乗り入れ渋谷、新宿、池袋各駅へ
3.臨海部ルート:品川ふ頭で地下に入ってりんかい線に接続し対岸の臨海副都心を横断して新木場駅(JR京葉線、東京メトロ有楽町線も接続)に到達。仮に同駅でJR京葉線と相互乗り入れすれば、この先にある東京ディズニーリゾート(TDR)の玄関口・JR舞浜駅や、大規模展示会場「幕張メッセ」の最寄り駅・海浜幕張駅へのアクセスも便利

となる。

 ちなみに「“羽”田」から伸びる路線が3本に分かれることから

「まるでフラミンゴの脚のようだ(1本脚だから)」

と例える声も。3ルートを合わせた総事業費は当初3000億円と推計されたが、現在では一部メディアが「3800億円」という数字を指摘する。残る2ルートの着工時期は未定で、まずは工事が比較的楽で、しかも「1丁目1番地」の東京駅直結の東山手ルートを先行整備させる。

国や都が建設に前のめりという追い風

羽田空港(画像:写真AC)
羽田空港(画像:写真AC)

 では、JR東日本にとって、羽田空港アクセス線は経営戦略上どんな利点があるのか。

 1987(昭和62)年の国鉄分割民営化で産声を上げた同社は、1993(平成5)年に株式公開を果たし、名実ともに「民間企業」になった。このため、国鉄時代のように一部政治家のゴリ押しによる採算無視の「我田”引鉄”」的な線路敷設は許されない。無理な大型投資で巨額損失をかぶれば、会社に多大な損失を与えたとして経営陣が株主代表訴訟の矢面に立つ可能性も低くないからである。

 翻って、近年の同社は新路線開発はおろか新駅開設にも極めて慎重で、今回のアクセス線はむしろ例外中の例外と言える。理由は簡単で、誰が考えてももうかる「ドル箱路線」になること必至と判断したからだ。

 世界屈指の利用客を誇る「羽田」と3600万人超という世界最大の東京都市圏の中心を10分台で結ぶ鉄道であり、しかも、前述のように工期も比較的短いため(工事の本格着工から8年程度)、投資額をすぐに回収できる。

 加えて、国が目指す観光立国の具体的目標である「2030年までにインバウンド(訪日外国人)6000万人」や、東京都が描く「首都東京の国際競争力アップ」を追い風に、政府や都がアクセス線計画にむしろ「前のめり」状態にある。このため、同社はいわば「買い手市場」状態で、さまざまな公的支援や優遇が期待できる。

 それでも同社は最初、この計画には及び腰だった。計画が初めて表舞台に登場したのは2000年で運輸政策審議会の答申で披露され、JR東日本に秋波を送った。だが、同社は並行して東京モノレールの子会社化を進める最中で、利益相反にもなりかねず反応は今イチだった。

 ところが、2013年にJR東日本は中期経営計画「グループ経営構想V(ファイブ)」で、「空港アクセス改善策の検討」を挙げ、アクセス線の可能性を示唆する。2016年に交通政策審議会が「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申で同路線の重要性を強調すると、触発されたように同社は2018年にまとめた中長期経営計画「グループ経営ビジョン『変革2027』」のなかで、「トピックス」と銘打ち「羽田空港アクセス線構想の推進」を訴えた。まさに方針の大転換だ。

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