「好きで路駐してるわけじゃない」 荷待ちトラックを襲う住民クレームの嵐、敵は荷主か? 運送会社か? それとも国か?

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トラック運転手の荷待ち路駐が社会問題となっている。その背景には物流クライシスを映し出す厳しい現実があった。

エンジンを切って暑さを耐える現実

小型扇風機(画像:写真AC)
小型扇風機(画像:写真AC)

 彼は他にも多くの理不尽な荷待ちを教えてくれたが、個々の事例は書かない。しかしこうしたケースは日本中いたるところで起きている。苦情を言う住民の気持ちもわかるし、理不尽な荷待ちを強いられるトラック運転手の気持ちもわかる。悪いのは、それを一般市民や運転手に押しつけて

「公道にフリーライド(ただ乗り)する」

荷主のほうだ。

「荷締めは敷地外でどうぞ、なんてところもあるよ。荷崩れしたら大変なのにね。仕方ないから路肩でやるけど、それだって違法だよ。違法なことなんかしたくないのに」

 場所を変え、高速道路の橋脚下、建て売りの小ぎれいな住宅が並ぶ広めの路地に止めていたトラック運転手に話を聞く。

「あの工場なんですけどね。とても時間に厳しいのです。だから時間を見計らって、ここからピッタリ着くようにします。ここはちょうどいいんですよ」

 見たところそれほど大きくない工場、いわゆるJIT(ジャストインタイム)ということか。「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」を目指し、在庫リスクを極力排除する方式だ。だから頻繁に、それも時間きっかりに出入荷を繰り返す。それにトラックもきっかり合わせることになる。優れた生産方式なのは認めるが、生産のために物流をないがしろにするのは本末転倒、在庫だけでなく流通リスクもトラックに押しつけているのでは、と筆者(日野百草、ノンフィクション作家)は強く思う。

「エンジンは切ります。ただでさえ目障りでしょうし、アイドリングの音で住民を刺激したくありませんから。だから許される、というわけでもないんですけどね。申し訳ないと思います」

 エンジンを切るということはエアコンなしということか。30度超えの8月はどうしていたのか。

「ここね、高速道路の下だからちょうど日陰なんですよ。だからしのげますよ。そりゃ暑いは暑いですけどね」

小型の扇風機を自前で用意していると笑う。

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