コロナ禍でも556機納入 エアバス2020年 いま選ばれる機材と「デリバリー改革」とは
デリバリーのリスクを最小化したエアバス

通常、航空会社は発注した航空機メーカーの製造拠点へ人員を派遣し、試験飛行や機内装備の確認などを行った上で、現地で引き渡し書面へ署名、その後に航空会社の拠点が置かれている空港へのフェリーフライトを行う。しかし、COVID-19の感染拡大に伴う出入国制限により、航空会社が航空機メーカーの製造拠点が置かれている国へ赴くことが困難になっているほか、比較的感染を抑えている国の航空会社にとっては、感染が拡大しているアメリカやヨーロッパへ人員を派遣すること自体が大きなリスクとなる。
こうした状況を受けてエアバスは「e-delivery」と呼ばれる、新たな引き渡しの手法を開発して実行している。
e-deliveryは、これまで航空会社の要員がエアバスのデリバリーセンターが置かれているフランス・トゥールーズへ赴いて行っていた地上での航空機の検査や確認、試験飛行で各種システムを確認する「アクセプタンス・フライト」などの作業を、すべてエアバスに委託できる。また引き渡し書への署名を含めた、旅客機の所有権移転に伴う各種作業も「e-SalesContracts」と呼ばれるシステムを使用して、すべてリモートで行える仕組みだ。
エアバスがe-deriveryを始めたのは2020年4月、トルコのペガサス・エアラインズへ向けたA320neoファミリーの引き渡しからだ。同社が2020年に引き渡した旅客機の25%以上が、e-deriveryによって行われた。
またエアバスはe-SalesContractsについて、ワークフローの効率性、柔軟性、透明性の向上に加えて、環境面でもプラスの効果が見込めると述べている。COVID-19収束後の航空業界には様々な変革が起こると見込まれているが、e-deriveryもそのひとつとなり得るのではないかと筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思う。