なぜ「81%」はEVを検討していないのか? 販売増が続く9か月の熱狂、市場拡大と未検討層が共存する不思議
割安感による登録車EVの躍進

2026年5月の国内乗用車市場をみると、電気自動車(EV)の売れ行きが前年の同じ月と比べて2.5倍の9632台となり、これで9か月続けて前年を上回った。一番多く売れた3月の1万2658台には及ばないものの、乗用車全体に占めるEVの割合は前年から2.1ポイント上がって過去最高の3.5%をマークしている。ハイブリッド車(HV)は日産の軽自動車「ルークス」の一部モデル廃止などが影響し3.5%減の13万5919台となったが、電動車全体では1.0%増の14万9316台にとどまるなかでの動きだ。
このEVの伸びは、自然に湧き出てきた需要というよりも、補助金の仕組みとメーカーの値段のつけ方がうまく噛み合い、買い手側の受け止め方が変わってきたことを映し出している。
なかでも目を引くのは、普通車や小型車などのいわゆる登録車EVが、同じクラスのHVに比べて実質的に安くなる逆転が起きていることだ。2026年1月、国は「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」をそれまでの90万円から130万円へと一気に引き上げた。この手厚い後押しを受けて国内メーカーの主力車種が買いやすい値段帯へと入り、EVはいまや「環境に優しい」というお題目ではなく、いくらで買えるかという目の前の損得で選ばれる存在になりつつある。
こうした風向きの変化を受け、メーカー側の売り方にも工夫がみられる。乗る人の生活スタイルや好みに寄り添う形への切り替えが進んでおり、たとえば5月22日に売り出されたホンダの「スーパーワン」は、走りを楽しむホットハッチとして乗る人を絞り込んでいるようにみえるが、5月単月だけで1736台を売り上げた。先行予約は7000台を超えている。本体価格が339万2000円(税込み)であるのに対し、満額の補助金が使え、さらに自治体の分を足せる東京都などでは実質150万円ほどで手に入るという強烈な割安感が効いている(『日刊自動車新聞』2026年6月8日付け)。
似たような勢いは、ほかの主力車種でも見ることができる。最も多い2036台を売ったトヨタの「bZ4X」は、2025年10月に大きな手直しを行い、走れる距離を伸ばしながら値段を思い切って下げた。そこに補助金アップが重なり、買い求める動きに火がついた格好だ。実質的な負担がHVより軽くなったことで、これまで手を出さなかった層へと買い手が広がっている。また、日本のEVを引っ張ってきた日産の「リーフ」も1422台を数え、これまでに乗ってきた人の買い替え需要や今の環境がうまく結びついて手堅い数字を維持している。
この流れは、車を売る販売店の役割も変えつつあるようだ。パーク24(東京都品川区)が、直近で駐車場やカーシェアリング、レンタカーなどのグループサービスを利用したタイムズクラブ会員を対象に行ったインターネット調査(2026年3月2日~10日実施、有効回答者数4752人。2026年6月9日発表)によると、消費者の81%が
「購入を検討したことがない」
と答えている。市場の大部分はまだまだ関心を持っていない人たちであり、スーパーワンの試乗車登録に見られるように、販売店は注文を処理するだけの場所から、乗ったことのない人に実際の心地よさを伝える場所へと手幅を広げている。EVの市場は登録車を中心に、じわりと新しい成長の形を見せ始めているのだ。