「その条件では運べません」 輸送能力34%不足時代へ――物流会社が選び始めた「荷主の条件」
運送会社との対等な関係構築

中小の荷主がこの厳しい状況を乗り切るうえで参考になるのが、厳しい条件のなかで事業を続けてきた企業の取り組みだ。1997(平成9)年に長野県で創業したクラフトビールメーカー・ヤッホーブルーイング(軽井沢町)である。ニックネーム制など独特の社風で知られる同社だが、物流への向き合い方はきわめて現実的だ。
同社の物流を考えるうえで避けられないのが、長野県という立地条件である。首都圏のように運送会社の選択肢が多い地域ではない。ひとたび配送網が止まれば、自社製品を顧客へ届ける手段を失うことになる。こうした危機感が、同社の取り組みの出発点となった。企業理念のひとつに
「取引会社への礼儀」
を掲げる同社は、物流事業者の困りごとに耳を傾け、ときには自ら動く姿勢を貫いてきた。例えば、物流事業者から相談を受けた際には、卸業者へ直接交渉を行い、納品リードタイムの1日延長を実現した。
これは、いうほど簡単なことではない。卸業者や小売店との納期交渉に失敗すれば、売上減少や信用低下に直結するからだ。そのため、多くの企業は
「物流の問題は物流事業者が解決するものだ」
という商慣行を前提に、現場の苦しい状況に十分向き合ってこなかった。しかし同社は、その負担を荷主自身の問題として受け止めた。
さらに、取引先の物流事業者から「同社製品は配送店ごとの輸送負担が大きい」と相談を受けたことをきっかけに、物流事業者の地域拠点の近くへ自社倉庫を移した。拠点移転には、移転費用や新たな配送費など、固定費が増えるおそれもあった。しかし結果として、物流事業者の作業効率は向上し、あわせて入出荷業務も委託することで、連携の強化と業務の円滑化につながった。こうした取り組みは、きれいごとではない。運送会社という
「代えの利かない存在」
を失えば、自社事業そのものが成り立たなくなるからだ。「取引会社への礼儀」という企業理念のもと、厳しい条件に向き合いながら、同社は物流事業者との対等な関係を築いてきたのである。