なぜ「信号待ち」が歓迎されるのか? 事故を約7割減らす仕組みが“わずか5%”にとどまってきた根本理由

キーワード :
, , ,
全国約21万基の信号のうち歩車分離式は約1万基(約5%)。事故件数を最大4割、対人事故を約7割減らした実証効果がありながら導入は限定的だ。効率と安全のせめぎ合いの中で、交差点インフラは転換点を迎えている。

渋滞悪化の先入観と円滑化の実態

歩車分離信号によって通行に時間がかかるというイメージを持ちがちである(画像:八千代市)
歩車分離信号によって通行に時間がかかるというイメージを持ちがちである(画像:八千代市)

 歩車分離式信号の導入が思うように進まない背景には、

「渋滞が悪化する」

という根強い先入観がある。車両が通行できる青信号の時間が削られる以上、待ち時間の増加は避けられない。実際、警察庁の「平成15年版 警察白書」でも、一部の交差点でクルマの滞留が増える可能性が指摘されている。

 もっとも、渋滞への影響が一律にマイナスに働くかといえば、必ずしもそうとはいい切れない。最新の指針が触れているように、歩行者が多い交差点では、右左折車両が横断する人波に遮られ、かえって処理能力が落ちている場合があるからだ。こうした場所では、歩車分離を行うことで全体の流れがスムーズになる余地が残されている。

 歩行者と車両の時間を完全に切りわければ、ドライバーは不意の飛び出しなどを気にせず進行できる。従来の方式では、歩行者を避けながら進む車両が後続を妨げていたが、この不安定な要素を取り除けば、交通の流れはむしろ安定する。通過の予測が立てやすくなることは、インフラを運用する側にとっても効率の向上につながるはずだ。

 もちろん、手放しで楽観できるわけでもない。2013(平成25)年の東京大学大学院による池袋駅周辺でのシミュレーションでは、自動車1台あたり

「4~10秒」

の待ち時間増加が推計されている。また、待ち時間が長すぎれば歩行者やドライバーの信号無視を招く恐れもあり、福岡県警察もこの点を課題に挙げている。渋滞の度合いは交通量や交差点の形に左右される。結局のところ、現場の状況に合わせた丁寧な見極めが求められているのだろう。

全てのコメントを見る